第38話

 はたしてこれにて一件落着。


 農園の主は平穏を手に入れ、クローデットはドラゴンモドキの外骨格予想外の副収入を手に入れた。


 終わってみれば結果オーライ――とはいかない。


「はぁ、月光蝶ギンギラギンギンモードになったのに、でっかいもふもふは手に入らないし、体中痛いし、最悪です」


 魔力を解放し、師のピンチを救ったノエル。

 だが、その頑張りに対して、報われる報酬を彼女は得ることができなかった。


 第一種限定解除ディスペル・ワンの影響で、身体の節々が痛む中、ぎこちない足取りで家路を急ぐノエル。

 そんな彼女に、ふと、優しい視線をクローデットは向けた。


「ま、今日はよく頑張ったな、ノエル。アホのお前にしてはまずまずだったぞ」


「おだてても世界の半分は出ないですよ。むしろ欲しいくらいです」


「そう拗ねるな。臨時収入も入ったことだし、久しぶりに、どこか、美味しい店にでも食べに行こうじゃないか」


 ホントですか、師匠、と、今までの暗い表情が嘘みたいに明るくなるノエル。


 単純なものである。


 あぁ、と、頷いたクローデットに、すかさずノエルは飛びついた。


 ――身体の痛みも忘れて。


「あにゃ、腰が!!」


「ちょっ!? ノエル!?」


 せっかくいい話でまとまろうとしていたところに、ノエルが体勢を崩してクローデットにぶつかる。


 はたしてくんずほつれつ重なりあった師弟二人の影。


「イタタ、師匠大丈夫です――か!?」


 上から覆いかぶさったノエル。その胸が直撃していたのは、彼女の師の顔面だった。


「あ、危ない――もしEカップじゃなかったら、危うく師匠を殺してしまうところだったぜ!!」


「ある意味死んだわ」


 青い顔をするノエル。そんな彼女の肩を捕まえて、暴力師匠は唸るように、彼女の名前を呼ぶのだった。

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