顔④

 ガラッ。


 教室の戸が開いて隣のクラスの高島先生が入って来た。


 「あ~今日もすみ子先生はお休みなので先生方が持ち回りで授業をするかな~ほら、お前らHRはじめるから早く席に着くように」


 そう言われて、みんな渋々と自分の席に戻っていく。


 ふふ、これじゃあ休み時間は質問攻めだ…♪



 「あ~…山下」


 席に着こうとしたアタシを高島先生が呼ぶ。


 

 「HRはいいから校長室に行きなさい」


 「え?」


 「昨日の件で…ちょっと話を聞きたい人が来ているそうだ」


 「は…はい…」


 

 その会話に、教室中がざわってして視線が一気にアタシに集まる。



 あは♪


 ゾクゾクする♪



 「どうした? 早く行きなさい、授業の事は気にするな」


 「はい」



 何とか教室を出て戸を閉めた瞬間、教室が一気に騒めいて高島先生の注意する声が響く。


 

 ふふ…なんだか足元がふわふわしするような感じ。


 「ふふ…」


 何だろ、顔がゆるんじゃう♪


 

 アタシはスキップしそうな気持を抑えて、俯きかげんにゆっくり廊下を校長室へ向けて歩き出した。







 コンコン。



 「失礼しま______」


 ガチャッ!


 「ああ、来たね、さぁさぁ! 入りなさいお待ちかねだよ」


 校長室に着いたアタシがドアを叩いてすぐに、バーコード禿げの校長が中に通してくれる。



 「さ、座りなさい」


 禿げ校長は、そのでっぷりとしたお腹をゆすりながら校長室の机の前に置かれたお客さん用のソファーに座るように言う。


 

 「は、はい…」


 アタシが言われるまま座ると、その低いテーブルをはさんだ目の前にすでに誰かがすわっていた。


 警察…のひとだよね…?


 あんな目にあったんだもん…そうだよね?


 昨日、襲われたあと110番した時『詳しいお話を聞くかもしれない』って婦警さんが言っていたから…。


 多分そうだろうと思う男の人が二人、並んで座る。



 「山下ともこさん…だよね?」


 アタシから見て右側に座っていた体格の良い若いお兄さんが、にっこり笑って聞いきた。


 「…はい、そうです」


 「初めまして、僕は刑事課の玉城…こちらは少年課の青沼です。 今日は、昨日あったことについて話を聞きに来たんだけど…大丈夫かな?」



 玉城と名乗った若い刑事さんは、警察手帳を開いて見せたけどその隣に座ってる青沼って刑事さんはちらっとアタシを見ただけでため息をついただけ。



 なにこのおじさん!


 感じ悪っ!

 


 「ほら、青沼さん! この子が不安になっちゃいますよ? ただえさえ怖い顔してるんですから」


 「あ"? こっちは3徹あけなんだよ…それに、普段から目つきの悪いお前に言われたくねぇよ…」



 不機嫌そうなおじさんは、けだるそうにお兄さんを睨んで頭をボリボリしながらこめかみを抑えて天井を向くいて大あくびをした。



 「ご、ごめんね~…じゃ、お話聞かせてもらうね」


 「あ、あの、お兄さ…刑事さん…なんですよね?」


 「ああ、制服じゃないから不安だった? 制服着てきても良かったんだけどじゃ小学校では目立っちゃうから」


 「そうなんだ…」


 「あと、僕とこの機嫌の悪い人の事は名前で呼んでいいよ」


 

 お兄さん____玉城さんは、バツが悪そうにしながら自分のスーツの胸ポケットから黒い革の手帳をとりだす。





 アタシは、昨日のことを正直に玉城さんに話した。




 「________なるほど、友達の家にプリントを届けた帰りに…と言う事だね?」


 「はい」


 「顔は包帯を巻いていたため分からない…犯人は手に傷を負っている…っと」


 玉城さんは、アタシの言葉を手帳に書き込む。



 「…ふぅん…嘘はついてねーみてぇだな」


 不意に今まで黙っていたおじさん_____青沼さんが、爬虫類みたいな目でアタシをじっ見る。



 「ちょっと、青沼さん! いきなり何てこと言うんですか?!」



 わたわたした玉城さんを尻見に、青沼さんはアタシをから視線をそらさず口を開く。


 「玉城よ…餓鬼なんてもんは、自分の都合のいいようにしか世界が見えてねーんだ正直に答えた風に見えてもな」


 ククク…っと、まるでアタシを小ばかにするように青沼さんの肩が揺れる。


 なにこの人!


 アタシが嘘ついてるっての?!


 

 「刑事さん、彼方はウチの生徒が嘘をついてるとでもいうんですか!」



 突然、刑事さん達の座るソファーの背後から今まで空気扱いだった禿げ校長が声を荒げた。



 ナイス禿げ!


 たまには役に立つじゃないの!



 「いえいえ…そうじゃないんですよ校長先生、その包帯の男とやらを見たのはこのお嬢さんだけなので慎重をきっしたいと言うだけなんですよ…なにせこの小学校からは5人も生徒が消えているのですから」


 青沼さんの言葉に、禿げ校長は言葉をもごもごさせる!


 ちっ!


 役立たず!



 「それじゃ、我々は帰るとします。 生徒さん達に動揺も広がっているようだし、少年課からカウンセラーの資格持ちの補導職員派遣のお話は上に通しておきます」


 それだけ言い残すと、青沼さんは警察手帳から名刺を取り出し一枚を禿げ校長、もう一枚をアタシに渡す。



 「お前の担当は少年課の俺、事件の担当は刑事課の玉城だ今後何かあったらこの番号にかけてこい」


 「…」


 正直がっかり。


 アタシ…玉城さんがよかった。



 「がっかりだって顔にでてんぞ?」


 「?!」


 青沼さんはそう言い残すと、玉城さんと一緒に校長室から出て行ってしまった。

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