脚⑤
どうしてこんな所に?
彼女のものか?
ガラッ。
「月島さん? 何してるの?」
「へ? いや、何でもっ! ぁの…」
「はい! これ、タオル…あと、良かったらコレ着て…」
少しはにかんだように彼女は、タオルと白い布を食卓テーブルに置いてボクの前に押す。
「じゃぁ…お言葉に甘えて…タオルありがとうソレに…え? コレ…!」
ボクは白い布を広げてみる…それはふわりとしたワンピース。
白の無地ではあるが…形がこう…なんて言うかぶりぶりだ…メルヘンだ…例えるならロリータファッション的な?
うっ…!
つい最近、父のパーティーでこういうのを着ろと泣きつかれて一蹴したやったと言うのに!
「あの…これはちょっと…」
「ああ、このままじゃお着替え出来ないね! 私、廊下にいる!」
キラキラと目を輝かせた彼女は、勢いよく廊下へと出て行ってしまう…ぅう…。
「…着るか…」
仕方ない。
雨宿りと紅茶にクッキー…その礼と、こんなに親切な彼女を勉の件があったとは言え疑った事…それと…。
ボクが普段学校で彼女にしている『傍観』と言う仕打ちに比べれば、こんなものどうという事はない。
ボクは、仕方なくこのドレスのようなワンピースに袖を通す。
ふむ。
ウエストにかなり余裕があるが、腕の丈はぴったり…か。
布地はさほど良い物ではないが、着心地も悪くない…けどこれは…。
「…月島さん、着替えた?」
すりガラスの向こうのふとましい影が、もじもじ動く。
「ああ、済んだ入ってい構わない」
ガラッ。
「うわぁ~! やっぱり月島さんによく似あってる!」
はしゃぐ彼女。
「もしかして、コレは君の手作りか?」
「うん!」
赤黒い顔がほころぶ。
驚いた…彼女は実に多才だ…!
紅茶の入れ方から、このような服を裁縫し…そして他者に対するもてなしと気配りが出来るなど同い年とは思えない…!
ボクは思う、そんな彼女が学校では虐められ蔑まれているなどおかしいのではないか? ましてや、殿城や友彦に何かしたと疑われるなど…。
「本当にすまない…」
「え? ううん、お洋服ぬれちゃってるし私のじゃ大きすぎるでしょ? …それともこの服着るの嫌だった?」
彼女は、すまなそうに俯く。
「いや、そうじゃない…有難く借りるよ! クリーニングして返そう」
「いいよ…これ月島さんにあげる!」
「え…そんな、これかなり手がかかっているだろ? いいのか?」
「ううん、まだ試作品だし着てもらって動きがみれたのがすごくよかった…それに」
彼女は、長い前髪に埋もれた小さな瞳で愛でるようにボクを上から下まで眺めて視線を止める。
「その服…月島さんの足がすごく映えるから」
足?
ブブブブブ…!
テーブルの上のスマホが震える。
「ああ、すまない…迎えが来たようだ」
「もう帰るの…そう…残念」
彼女は残念そうにそう言って、ボクを玄関まで見送る。
「濡れてた服、こっちで洗ってもよかったのに…」
「いいや、爺やがうるさいしこれ以上君に迷惑はかけられない」
「そう、じゃぁまた明日」
「じゃぁ…」
ボクの背後でガラガラと戸が締まろうと______ガッツ !
「…? 月島さん?」
思わず締まる戸に手をかけたボクに、彼女は驚いく。
「また、遊びに来てもいいか?」
「え?」
「教室では多分、普段通りにしかボクは君に接するとこは出来ないだろう…けど、そうだななんと言えばいいのか…」
「?」
「今日から、君とボクは『秘密の友達』と言うのでどうだろう?」
「ヒミツノ…トモダチ…?」
「君が嫌でなければだけど…?」
ボクの提案に君は、まるで壊れた人形のようにコクコクと頷いた。
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「正気か?」
ケントが呆れ、ミカの顔が曇る。
「勉にばれてみろどうなるか知らねーぞ?」
放課後の教室の隅。
いつものように集まった二人にボクは昨日の顛末を説明した。
「勝手に行動すんなつったよな?」
「かっかするな、不可抗力だ」
「ゆっぽぉおおん! 何しちゃってるの~~…!」
ケントは兎も角、ミカにまで呆れられるなんて心外だ。
「とにかく、彼女の事は容疑から外して構わないと思う」
ボクの言葉にケントの眉が八の字を作る。
「…俺にはそう思えない…」
「何だと…?」
「少なくともアイツは何かしら関わってる…そう思う」
「ケント…」
珍しくケントとボクの意見が割れた。
「それはどういう事だ?」
「あの後、家に帰ってから早速RINEでバスケ部の連中にそれとなく友彦の事を回した…んで分かった事がある」
「なんだ?」
「あの日。 丁度、行方が分からなくなったとされた放課後…いつも正門から帰るはずの友彦が裏門にいるのを見た奴がいるんだよ」
「けんちーそれほんと?!」
ミカが机から身を乗り出して、ケントに詰め寄る。
「ああ、俺のクラスでバレー部の猪瀬が見たらしい…裏門はバレー部の用具入室から見えるからな」
「だから何だと言うんだ? ソレと彼女の関与を結びつけるものはないだろう?」
「裏門から出れば、アイツの家まで近い」
ケントは低く唸る。
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