第17話 宴(UTAGE)
「イサキはどこの大学出たんだ。トーダイか? キョーダイか?」
エルセンは酔っている。
「コーソツよ」
わたしも酔っている。
クリーティーもポールソンもジェフリも、みんな。
少女であるヴィッキーはソフトドリンクなのでアルコールには酔っていないが、雰囲気に酔っている。
「あ、コーソツ、って分からないか。高卒。大学行ってないのよ」
「すまん」
「謝らないで。えーとね、最初は一般職で採用されたんだけど20歳の時にいきなりベトナム行けって言われてね。今は青果担当だけどその時は水産物やってた」
うちは中小の貿易会社だ。小娘だろうがなんだろうが、人手が足りなければ世界の果てへも放り出す。
「ベトナムか。しんどそうだな」
わたしは笑って答える。
「ここよりずっと安全よ」
エンターテイン以外でこんな風に事務所のスタッフと飲むのは多分初めてだ。ヴィッキーに至っては食卓を共にするのも今日が最初だと思う。
ウォーターフロントにあるピタブレッドがおいしい小洒落たタバーン。
はっきり言って、楽しい。
「そろそろ帰ろうか。明日もあるし」
伝票をボーイにちらちら振り、チェックを頼もうとしていると「持ちますよ」と言って、ジェフリがわたしのデイパックに手を触れようとした。
「やめて!」
びくっ、とジェフリが手を引っ込める。
「ごめん。自分で持てるからいいよ」
銃が入っているのだ。
それに、このGT Hawkins のデイパックの底は柔らかな布でしつらえてある。
持てば重みと布のふくらみとで拳大の鉄の塊だと分かる。
軽めの鉄アレイなどとは勘違いしないだろう。
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