第13話 わたしはこうして銃を手にする
どのくらい時間が経ったのか。今が深夜なのか明け方なのかも分からない。
コツ・コツ、という音で目が覚めた。
上目遣いで目を上げると、口髭を生やした若い黒人の男が何かで運転席のウインドウを叩いている。
いきなりドアを割るつもりはないらしい。とにかくわたしを起こしたいのだろう。
音の感じから拳銃のグリップで叩いているのかと思った。
でも、違った。
彼が右手にしているのは歯にギザギザのあるナイフ。こういうナイフを何て言うのかわたしは知らない。その柄で窓を叩いているのだ。
わたしは安堵した。
上体を起こし、目を覚ましたことを彼にアピールする。
彼の後ろにもう1人黒人の男がいる。髭は生やしておらず、やはり手に持った、こちらは少し細い刃のナイフを見せている。
わたしはゆっくりとダッシュボードを開け、S&Wを右手に握った。
彼らから視線を外さないまま、銃を向けてみる。
2人とも、びくっ、という感じですっと車から半歩離れた。
わたしは銃口の位置をそのままに左手でエンジンをかけ、ゆっくりと車を出した。
2人が完全にバックミラーに映ったところでスピードを上げ、大通りに出る。
銃をデニムの太腿の上に置き、車のハンドルを両手で握り直す。
太腿にぬるい熱が伝わって来る。
どうやらよほどきつくグリップを握り込んでいたらしい。銃にわたしの生身の熱が伝導していたのだ。
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