第4話 fuckin' gun
「今夜の予定は?」
「19:00からノーランさんとのエンターテイン」
「エルセンとクリーティにお願い」
19:00日本食レストラン、”
ノーランがボディガードと一緒にテーブルに着く。
わたしはエルセン、クリーティと一緒に店の入り口側に座り、ワインを注いだ。
エンターテインとはつまり接待のことだ。
得意先であるノーランのエンターテインを日本本社から指示された。経費報告には、entertainment、と伝票に打つ。
わたしはノーランのボディガードがあまり好きではない。インド系のさほど背が高くない男。ひとしきり料理も出終わり、ドン・ペドロと呼ばれるアイリッシュコーヒーでも飲みませんかと話していたところで、がたっ、とノーラン側の席に誰かが座った。
「俺もいいかな、イサキさん」
「どうぞ」
ノーランと同業であるテディのボディガードだ。やはりインド系で名前はラッセルだったと思う。
ラッセルには強盗に襲われそうになったのを助けて貰ったことがある。
彼が顔役を務めるディスコに顧客を接待で案内した時、車を降りた途端に脇から強盗が飛び出してきた。慌てて店まで走ろうとしているところを、ラッセルが出て来てその強盗をあっさりと組み敷いた。
でも、わたしは彼が怖い。できれば近づきたくないが、仕事をする中ではそういう人物との社交も避けられない。一杯のアルコール入りコーヒーを振舞うことくらい、必要経費だ。
「お前の銃ってどんなだっけ」
ラッセルがノーランのボディガードに訊く。同じインド系、面識があるようだ。
テーブル下でノーランのボディガードが口径の小さいリボルバーを見せている。
「そういうのの方がいいな。俺のはこれだ」
ラッセルはやけに大きいシルバーのオートマティックを見せている。
”fuckin' gun”、とか何とか言ってる。何がファッキンなんだろう。
わたしは眼下の銃を見て、深い感慨を覚える。
彼女・彼らへの優越感を噛みしめる。
彼女・彼ら、とは、いじめっ子のことだ。
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