追憶のマスカレード

待屋 西

プロローグ

とある貴族の屋敷━━━━━━━

屋敷の外装に負けぬほどの気品と華々しさを兼ね備えた家具の並ぶ大広間。その部屋から二つほど扉を開けば辿り着く、主人の書斎。囁きのようにその空間を満たす、オルゴールの音色。屋敷の主人は、その音色にそっと耳を傾ける。

「しばらく、会えないね。」

「…そうね。」

思い出されるあの日の記憶。

記憶の中の少女はそっと微笑む。あの日から、既に15年の月日が流れていた。

「しばらくは会えないけど、でも、僕

が大人になったら」

記憶の中の少年、幼き日の主人は

涙をこらえ少女に告げる。

絶対、迎えに行くから。

だから、待ってて。

「ありがとう」

微笑む少女の目から頬をつたった雫は、あの日の記憶を滲ませていった。

オルゴールの止まった空間に、訪れた静寂。

だが、それを掻き消すように、すぐに次の来訪者が現れた。

コンコン。

「子爵様。客人がお見えになりました。」

現実からのドアノックは、主人を追憶から解き放った。

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