第8話 エピローグ

 お兄ちゃんが壁の中に旅立ってから、もう10年が経過しようとしています。

 梨里ちゃんはその後、能力が発症した為、塀の中の学校に1人で通う事になりました。

 私はというと――

「乃々さーん、この荷物はここでいいんでしたっけ?」

「あっとるでー」

私も能力が発症し、今日から壁の中の生活となります。

 お兄ちゃんがここに帰ってくるまで待つ予定でしたが、どうやらその約束は守れそうもありません。でも大丈夫です。この家は空き家になるわけでは無く、異世界からやってきたこの人が今から住む予定ですから。

「乃々さん? どうしました?」

「ん~、何でもないよ~。それよりも約束覚えとる?」

「えーっと、『毒男』って人が来訪したら乃々さんに伝えるんですよね?」

「せやせや。その事に関しては、大丈夫そうやな」


 さて、必要な物は荷台に積みました。あとは国から派遣されるお手伝いさんを待つだけです。

「なぁ……ホンマにアンタ1人で大丈夫なん?」

と私はなんとなく雰囲気がお兄ちゃんに似た異世界人に向けて話しかけます。

「いや……まぁ多分、大丈夫です」

この回答から、お兄ちゃんと似たようなダメ男オーラが漂ってきます。

「ちゃんと就職せなあかんよ……。生活するのにお金も必要やし……」

「大丈夫です……。はい、多分……」

ま、お兄ちゃんと似たような感じという事は、やるときはきちんとやるタイプなので大丈夫でしょう。きっと。



「今日転居予定の鬱田乃々様でよろしいですね?」

「はい、そうです」

しばらくすると国から派遣されたお手伝いさんが2人、家の前に到着し、確認作業を行います。

「荷物は……これだけですか?」

お手伝いさんは拍子抜け、と言わんばかりの声のトーンで聞いてきます。

「ほら、何事も身軽な方が動きやすいしいいでしょ?」

理由は殆どの家具とかを残していくため、必要最低限の物しか持って行っていないからなんですけどね。

「じゃ、塀の中の新生活! 気合入れていきましょー!」





前日章 異世界人が集まる街エルドラドのようです 完

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