第2話 江戸の華

○晩夏 江戸日本橋 大通り


  橋を渡ってすぐの目抜き通りの一番手前にある、二階建ての大きな呉服店・大黒屋。江戸一番の呉服屋・大黒屋が、冬物の新作展示会ファッションショーを行っている。


× × ×


  絢爛豪華な展示会ファッションショー。たくさんの少女達が、瓦版を持って大黒屋の前に集まっている。前座の少年楽団バンドが演奏し、豪華な着物を着飾った着付手本方ファッションモデルの少女達が、舞台の上を歩く。

  大取トリを飾るのは、ひときわ美しい衣装を身につけた大黒屋潮五郎の跡取り娘・りさ(18)。りさをエスコートするため、無理矢理豪勢な紋付き袴を着付けられた、婿の哲治郎(25)がしかめ面のまま舞台に現れると、少女達が大きな歓声で出迎える。


× × ×


  観客たちの波のなかに、ボロボロの旅衣装に三度笠をかぶった龍之介(18)

  観客の少女たちの人波に揉まれ、押しつぶされそうになる。


龍之介「わ、ちょ、ちょっと!」


  倒れそうになりながらも、りさと哲治郎が歩く舞台を睨み付ける。舞台上で楽しそうに歩くりさを苦々しく睨み見上げる龍之介。舌打ちをして踵を返し、会場から立ち去る。

 

  舞台の上で、花嫁衣装へ早着替えをするりさ。

  少女達の歓声がひときわ大きくなる。

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