第2話-2
この抜刀隊前線指揮所に来るまで、連絡将校と交渉しては救助要請を嘆願し、らちがあかないと判断すると、臨時設置の渋谷方面軍司令部に直接救援要請に出向いたのだが、ほぼ門前払いで相手にしてもらえなかった。
結局、最後に頼って話を聞いてくれたのは、普段から後方予備兵力として待機していた関係で懇意にしてもらっていた第78女子抜刀中隊だった。
小競り合いの戦闘などで増援として一緒に戦ったこともあり、抜刀隊女子たちも学生達の面倒をよく見てくれていた。
その彼女たちもお手上げの状態なのだ。
「普通に救出だけの作戦を実行しても、数人を救い出すのに数十人の兵士が確実に命を落とすことになる。そんなのは、作戦とも呼べないってことで実行不可能ってことだ」
副隊長が正論を紫音に告げた。
立場が逆なら、紫音もそう言っただろう。
「では、彼女たちは見捨てられるのですか?」
見開いた瞳でまわりの抜刀兵の顔を見たが、誰も何も言わない。
誰も助け船を出してはくれないと悟り、紫音は柏木に真っ直ぐな視線を向けた。
この最前線で、唯一まともに頼れそうな人間は、今のところ彼女しか見当たらないのだ。
この二十代前半の抜刀中隊をひきいた軍曹にすがるしかなかった。
「ええ、このままだと見捨てるしかないわ。だから、何とかできないか考えているのよ」
柏木は紫音の視線に真っ向から立ち向かってくれた。
「あなたも兵学校の生徒会長なら少しは考えなさい」
「は、はい。さっきから、ずっと考えています。でも・・・・・」
考えろと言われて、17歳の学生には何も妙案はなかった。
「そんな無理を言わないでよ。作戦部の参謀に相談してみても何も思いつかなかったんだし」
小隊長の一人が、答えられずにうつむいた紫音を擁護するように言ってくれた。
「つーかなぁ。一度崩壊した戦線を立て直して反撃するには、一週間とか一ヶ月くらいは普通かかるだろう」
誰かの正論が、その場に沈黙をもたらした。
確かにそれが正論だった。
「・・・・・・」
こうやって何もできずにいる間にも、取り残された同級生たちに死が迫っているのだと思うと、何も考えつかない自分が無力で悲しくなってくる。
「ばか。そんな小学生レベルの回答なんか、誰だって出せるんだよ。もう、こうなると奇策のたぐいでも何でも考えろってことだ」
副隊長の仕切る言葉に、その場の全員が再び思案顔に変わった。
現実を直視した会話は、切羽詰まった紫音には息苦しさしか与えてくれない。
実際、今の兵力では救出作戦など論外なのは、紫音にも理解できる。
無理に動いて前線に穴があけば、それこそ首都圏全域が滅亡してしまう惨事にもなりかねない。
数人の学生を救うために、そんな無理をするなど現実には無茶な話なのだ。
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