上へ参らないでくれ

飛び込み営業にやってきたどこぞの営業マンが、受付の内線電話で丁寧に追い返したというのに、チラシと名刺をエントランスに置いていった。

こういうのは名前を目にしてもらうことが大事なので名刺だけでも受け取ってもらおう。そんな考えでのことだろう。


いちいち飛び込み営業の相手をしていたら弊社は手が回らなくなってしまうので、基本的にお断りしている。

(うちよりももっと人が多いところ回った方がいいですよ、営業マンさん)

そのせいで小一時間ほど、チラシと名刺は思いがけず放置してしまい、帰るときに気づいた。


エントランスに置きっぱなしは見栄えが悪いので、帰る前に事務所に置いていくことにした。そのとき丁度エレベーターが来たので、一緒に帰ろうとしていた同僚を先に下に行かせ、事務所に戻った。


私は帰るからとりあえず預かっておいてくれと、数少ないもう一人の同僚に押し付けるようにしてチラシと名刺を手放し、エントランスに戻った。


すると、なぜかエレベーターがやってきていた。


よくわかんないけどラッキー、と思って意気揚々と乗り込んだ。そして一階を押した。


なぜか上に向かった。


素で「は? え? ちょ? ま?」みたいな語彙力のなさを発揮した。

「ま?」は「マジで?」と「待ってほしい」を頭の中でミックスした結果。


下らないな。上に向かっただけに。


そして二階上に上がると、一緒にいた人に「お疲れ様でーす」と言って、お姉さんが乗ってきた。内心震えながら「何階ですか?」と聞くと、「屋上です」と言われた。


またもや上がる。


屋上、もとい自販機&喫煙スペースに到着。お姉さんが降りる。私はやっと一階に向かう。


お姉さんが乗ってきた階で止まった。


そして「お疲れ様でーす」と言われた人が乗ってきた。


目が合いかけて、必死で逸らした。

気まずさがエレベーターに鎮座して、一気に消え入りたくなった。

なんでこいつこんなに早く戻ってきたんだ、そう思われたかもしれない。私からすれば、なんで帰る人を先に乗せなかったんだ、という気分。


やっと一階に辿り着くと、一緒に帰ろうとしていた同僚が待っていた。

屋上まで行ってしまった話をすると、


「ごめん、親切のつもりで二階にエレベーター戻しちゃった!」


と笑いながら言われた。

おいおいそりゃないぜ。タイミングの良さが無駄すぎる。

もう二人そろって笑うしかなかった。


同僚がここに書くことを快諾してくれたので書いてみたけれどあまりのくだらなさにちょっと更新をためらうレベル。


まあいいや。ぽちっとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る