病院行こうとして死にかける

 MAPというアプリが使いこなせない。


 私は筋金入りの方向音痴なので、そうではない人からしたら非常にわけのわからないことを言っているのだと思う。でも方向音痴じゃない人の気持ちは全くわからないので、そこはお互い様。


 通院のため、会社を早退して神経内科へ。行くのは二回目で、細い道がいくつもいくつも交差しているので、たどり着ける自信はなかった。


 案の定道に迷って、「MAP使えば迷わないでしょ」という友人か誰かの言葉を思い出し、MAPを開いた。


 行き先を入力。現在地を測位。


 測位してくれない。


 焦った私は、MAPを拡大してビルの名前まで出てくるように設定した。


 しかし目の前のビルがどれなのかもわからない。ビルの名前じゃなくて目印になる店の名前を設定してほしい。方向音痴用の道案内アプリ誰か作ってくれませんか。需要はここにあります。


 案内板を見ても私がどの方向を向いているのかわからなくて、周りの人も忙しそうで道を聞けなくて、さらに血迷ってMAPを開いてみると、やっと現在地を測位してくれた。


 全然違う場所にいた。


 六丁目に行くはずが七丁目のはずれにいた。


 ビルの名前もよくわからないし、通りの名前も出てこない。仕方ないので歩いた。


 変な方向に行った。


 北東ってどっちだ。


 もっとわかりやすくしてほしい。それがわかればMAPに頼るわけなかろう。方向音痴向けアプリ、お待ちしてます。


 方向音痴なりに色々考えて、こっちだと思った方向に歩いた。


 GPSがついてこない。


 動いても動いてもついてこなくて、脳内に疑問符が浮かぶだけで何の意味もない。


 こんなにMAP使えない人間って他にいるのだろうか。もしいたらお友達になりたいけど、オフ会はしたくない。きっと目的地にたどり着けない。


 なんだよ役立たず、と携帯に愚痴って信じた道を進む。


 見慣れた通りに来た。


 一周回って、戻ってきた。


 ふざけんな。


 初心にかえって、大通りからの道と目印を確認しようとする。


 GPSをより詳細にしますか? という趣旨の文言が目に入って、思わず「もう20分早く出てこいよ何を今更」と独り言。多分自分のせいなんだろうけど。


 詳細なGPSとも紆余曲折あったのだけれど、その10分後には病院にたどり着けた。


 頭に振動が伝わってくるだけでくらくらするのに歩きまくったもんだから死にかけ。


 こんなの絶対おかしい。人間として、何か根本的なものが欠落している。前世の業が深かったのか。


 頑張って功徳をツムツムするので、来世は迷子にならない人にしてください。よろしくお願いします。


 あと、方向音痴向けアプリ、お待ちしてます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る