てすさび

加代

トマト

食欲がなかった。しかし私には「皮膚科の薬を飲む」というミッションがあったので、無理にでも何かを食べなければいけなかった。


ツイッターをつらつらと眺めていると、「トマトにオリーブオイルと塩コショウいくらでも食えるわめっちゃうまい」的な感じのことを友人が呟いていて、そういえばトマトがあった、食べようと思った。


実家の母は帰省するごとに色んな物を私に持たせる。今年の盆は小さなキャリーケースの半分くらいに野菜を目いっぱい詰め込まれた。


夏だよ腐るよと言っても大丈夫大丈夫と持たせる。じゃがいも三種類(きたあかり、男爵、メークイン)、ナス、きゅうり、トマト、もう一つくらいあった気がするけど覚えてない。


トマトは親戚の家でつくったもので、まだ青いものを持たされたけど、「大丈夫、おいしいから」といって3つもくれた。


青いし、まあ少しはもつだろうと、田舎出身のくせに何も考えず冷蔵庫に放置。そして今日取り出してみた。小さめのでいいかと、一番小さいのを手に取る。ヘタのあたりが、なんだか黒い。


これやばそう、と思って割ってみると、中身のあのじゅるっとしたあれが黒っぽくなっていて、まな板がトマトを切ったとは思えない色になった。


やばいぞ全部やっちまったんじゃないかと、そう思って残りの2つを手に取る。どことなくふよふよしている。あ、これやばいやつや、と、脳裏にアザラシのラインのスタンプを過らせながら切ってみた。


青かったけど普通にトマトだった。


なんで大きいトマト二つも食べてんだ私は、と思いながら、オリーブオイルと、昨日何気なく買ったバジルペーストを乗っけて平らげた。松の実がおいしい。今度自分でも作ってみたい。


薬を飲むのを忘れていた。飲む。

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