雨のち飴

毒ぷぅどる

昨日(1)

そう、私の知らない世界が少しずつ音を立てて壊れて逝く。


まだ小学生だった私は、自分の事しか考える余裕がなかった。


私が小学校低学年の時、父と母は別々の道を歩み始める。

私は母の歩もうとする道に必死に着いて行った。

それが事の始まり。そして、私という名の世界の終わり。


私の母は、優しく美人で兎に角、異性に人気があった。

そんな母に“彼氏”が尽きる事はなかった。


・・・その誰もが私という“おまけ”を欲しがった。

私は受け止めるしか選択肢を見つけることが出来なかった。

その中で、心許せる場所を見つけられたりもした。

叶わぬ恋の始まりと後悔の沼に沈み溺れる。



ある日、名前も知らない君を待っていた。

中学生になりたての私は、自分なりに身なりを整えて

私の中の安心感が恋に変わる瞬間はそう遠くない。

そんな淡い期待を持って君と逢う。

君との会話は私の心の穴を埋めるかの様に次々に流れていく。

肌寒さを感じる私に君は自分の上着を貸してくれた。


君の上着からは甘い香りがしていた。

今でも覚えてるその香りは私の君を記憶する為の唯一の手段である。


その後の事はあまり覚えていない。

逃れられない快楽に身をゆだね、私自身の女という武器を限界まで使用する。


君は優しく激しい接吻で私を騙す。

君との繋がりは私を女性にした。


この出来事がこれから始まる地獄の幕引きとなる。

その後も数人の異性と繋がり、全てが母の知人だった。

その頃には自分の気持ちが見えなくなっていた。

私の憧れである母に少しでも・・・一歩でも近付く為に精一杯だった。


中学生、ココロとカラダのバランスは崩壊しつつあった。

学校にも行かなくなり底なし沼に入ってしまった・・・


引越し、転校を何度も繰り返し居場所の無い世界を彷徨う毎日。

そんな世界から救ってくれる人を、ただただ待つ日々に嫌気がさしていた。


私が中学校を卒業する頃には、君はもう居なくなっていた。

名前も知らない君、私を女性に変えてくれた君、君への気持ちを整理しよう。

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