秀頼の顔

kingsglaive

第1話秀頼の顔

古来の国は現在の県にあたり、当時は

滅多に国をまたいでの往来は無かったので

国によって顔の大まかな分類ができたほどであった。

秀吉は猿顔であったが。。

生まれは尾張とも三河駿河とも言う。

近江人とははっきりと違う顔立ちであった。


茶々、茶々、どこにおわす。


秀吉はいつごろからか陰気で殺人好きになったが

元来は陽気な平和主義者で

いつもの猫なで声で茶々を探していた。

猿が猫なで声で。。

大野修理は心の中でつぶやいた。


秀頼様こちらへ。


修理と秀頼は秀吉を避けるように

城の奥へと歩いて行った。


殿下。


茶々は秀吉の気をこちらへ集中させようと

負けじと猫なで声で言った。

遠くその声を聞いていた修理は

複雑な気持ちであった。

秀頼は一緒ではないのか。

秀吉はもう半年ほど秀頼に会っていなかった。

茶々が会わせようとしなかったのだ。


鶴松の二の舞だけにはさせとうないのです。

大事に育てたいのです。


鶴松とは秀吉と茶々の第一子で夭逝した過去があった。


それを言うでない。


では茶々が側におるだけでよいではありませんか。

そうじゃな。


月明かりが2人を照らす。

1人は近江独特の切れ長で丸みを帯びた目。

もう一人も。


翌朝

清正が帰国の挨拶に来た。

よう参られた。

膝に秀頼を抱いた茶々が応じた。

ここに来る前育ての母である北政所の所へと行った際

言われたので渋々きたが。

出立の前に秀頼の顔を見て行け。

清正は挨拶を母の意を主君への挨拶とこの真っ直ぐな武将はとらえたが、秀吉の妻として長年豊臣を支えた大政所が

言った顔はなぜか寂しそうであった。

豊家か。。

後年大政所は積極的に家康支持に回る。

秀吉さまは天下泰平を創ったのじゃ。

今の豊家ではない。

半年前、大政所が目鼻立ちがはっきりしてきた秀頼をみてから、何かが変わろうとしていた。

大きなうねりのように。

この勘違いが歴史を変えようとは。


勘違いというものは歴史史書には書かれない。

当然である。それは事実のみ書かれるからであるのは

言うまでもない。

しかし勘違いや後年の勘違いも含めて

人が書き記す以上間違いはあるのではないだろうか。

そういった勘違いの物語が今始まろうとしていた。


秀頼の顔は近江独特の切れ長の目に

笑うと半月型になる。

典型的な近江の顔。

秀吉のそれとは違った。


男の嫉妬ほど見苦しく、狂気を帯びているものはない。

しかも年を取ってからの、権力者の。。


人の世の争いは9割以上が男女に関わることだという。

金も突き詰めれば男女のことであり、愛欲である。

世紀の男女の合戦。

茶々でもなく、秀頼でも、家康でもない。




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