第29話 向かい合うは・・・

 部屋の扉からノックと共に「失礼します」という言葉が放たれた後、静かに開かれ扉から中へと入って来る存在が三つ。


 一つは先ほどの受付、そしてその開かれた扉から入ってき二つのうち一つは…みるからに獣人であるという主張をしてくる存在とヒューマンタイプの種族だった。


「お待たせしました、アーネスト様。こちらが組合ギルド登録員担当のイリアスと、この組合ギルドの副所長のテオーネ」


 受付の人から紹介されたのは二人。


 まず初めに先ほどの獣人受付から紹介された一人目は、イリアスと名を紹介された獣人と主張としたという存在であった。

 何しろ、その見た目がはっきりと獣人と主張してくるぐらいに見た頭部が虎。それはもう立派に見事にタイガーという存在そのものを主張しており、その虎の頭に皮鎧の様なものを着ているという恰好。

 もうアーマーを着ているタイガーという直球的な印象しかないのだが、やはり獣のサガなのか、何かしらの威圧的な感じでこちらを見ているという形であった。


 そしてもう1人。

 副所長として紹介されたテオーネと紹介された人族。

 見た目はそのままヒューマン型ともいえ、ヒョウさんを呼ぶ前から気づいていた尾行らしき存在で、印をつけていたその人である。

 こちらは普通にヒューマンタイプの女性であるのだが、赤毛のクセのあるショートカット的な髪型に、赤い瞳。そしてその身体付きはしなやかさを主張するかの如くの動作ではあるのだが、雰囲気的には今にもまるでソコにいないというぐらい、存在が薄いとでもいうぐらいの雰囲気の不思議な感覚という。



「自分は、アーネストと申します。早速なのですが、こちらでガーランの素材買い取りを……」


 相手からの紹介の後、自身の挨拶が済んだのち、それぞれが椅子へと座り用件をすまそうと此方から聞いてみることにしてみると、



「その話の前に、少しよろしいだろうか」


 そう此方の言葉が言い終わる前に遮ってきたのは、虎人。さらに矢次早に


「率直にいう。ハンター組合ギルドへの登録移管は出来ないか?」

「え?」


 ん?

 たしか、助手の方は勧誘は無いだろうと言ってたはずなのに、いきなり直球で来てるんですけど?



「ええっと・・・」

「イリアス。早急すぎだ。まずは私たちの現状から話すべきだろう」

「しかし・・・」

「イリアス」

「……わかりました」


 存在希薄から窘められていきなりテンションダウンしてる虎人が、まるで猫の様に…あ、虎ってネコ科か。


「すまない、アーネスト殿。貴殿はハンター組合ギルドの事についてどこまでご存知だろうか?」

「たしか・・・」


 存在気迫の方から、ハンター組合ギルドについての質問が来たのだが、来る前に助手の方から聞いた内容を覚えている範囲での回答を行っていく。

 その説明を、存在気迫の方は相槌で聞き続け、虎人の方は「その通りだ…」と悔しさが混じった言葉で、こちらの説明を聞いていた。

 そうして、自身が知っている内容が概ね間違いがないという確認が取れた。



「どうだろう。理解をしているというのならば話は早い。少なくとも我々の組合ギルドとしても、有望な人材を野に埋もれさせ続けるのはもったいないと思っている。そのために、我々の組合ギルド移管を行ってもらえればと思うのだが…」

「そうおっしゃられても、今の職安組合ギルドに世話になっていますし。それにそこから職にも有りつけましたので」

「それでも、我々は移管をしてもらえるのならば、実力的に第四層位から始めるという事も可能だ。どうだろうか」


 説明が終わるや否や、虎人の方は机を叩きながら興奮気味に主張してくるのだが、完全に交渉術というかそういう類には向いていない感情型とでもいうのだろうか…

 そもそも第四層位なるものをあげてくるが、それが一体どういうものかがよくわからない。たぶん階級制度みたいなものだろうとは思うが・・・

 存在気迫の方からは、ヤレヤレとでもいった感じで軽く首を横にふり


「イリアス」

「は・・・はい・・・」


 と、その感情的になっている虎人を止めるかの様に、存在希薄な人が…といった所である。


「申し訳ありません。彼…イリアスは組合ギルド登録員の管理をしている部署の物で、立場的には言い辛いのですが……、現状、我々の管理下だけでは対処が難しい依頼というのが、やはり存在はしており、それらを彼なりに何とかしようと憂いてるだけなので……」

「あぁ、はい、それは、まぁ、わかります」


 悪気はないというのは、わからないでもないが、あまりにも強引すぎる形のために、はっきり言えば印象は悪い。

 これ以上虎人の方からの発言は控えさせた方が良いんじゃないかとさえ、こちら側から思ってしまうほどでもあった。



「それでいかがでしょう、こちらとしては、そうですね…先ほどの無礼の件もありますし、第八層位と買い取りに上乗せを含ませる形などで、先ほどの非礼に対しての保証を行わさせていただきますが・・・」

「第八層位ですと・・・?それは所長の許可が・・・」

「私が取り付けます」


 何かしらの裏のやり取りがある様なのだが、先ほどから気になっていた単語があるので。


「すません、その"層位"って何でしょうか?」

「ん?ああ、説明が必要だったか、すまなかった。層位とは・・・」


 虎人から、"層位"に関しての説明がなされたのだが、いうなればハンター組合ギルドにおける序列または階級を指しているとの事で、実力に見合う層位が記されていること。

 序列最下位は第一層位となり、経験と実績からその実力が認められるとより上の層位へとくらいが上がり、それに見合った高額の依頼を受ける事ができるようになると。

 そういう実力に見合わない人材による事故を少しでも防ぐためにと作られた制度というのが本音なのだが、その実力が高くなれば、国に認められ騎士爵位や男爵位といえる地位すらも手に入れる事が可能になるという事でもあった。

 ただ、この層位は国が変われば制度も多少変わる為、厳密にいえば今いる自国のみに適用されるものと思ってほしいという事であった。


 それで、先ほどの第四層位では、素人からようやく脱却した実力という形であり、第八層位となると、専門的な対応ができるというさらに高い人材になるという。


 そもそも、海生魔物は陸生魔物の討伐よりも難易度が高く、ガーランを仕留めた実績から、専門的な区分として第八層位から初めても問題ない実力があると判断するとのことであった。


 というか、あのガーランって、かなりとんでもない魔物になるのか?と聞いてみると"モノによっては大型船を破壊し災害級に匹敵する魔物"という立ち位置のため、大型が一匹でも出たら災害的な被害がでてもおかしくはなかったとのこと。

 うぉぅ・・・なんだそれ・・・


 まぁ、話は分かったが、上の階級から始れるという事らしいが、正直な話、勧誘してくるという事は、それだけ人材が足りない、つまりこちらに何度も厄介事が回ってくる回数が多くなる。という事が想定できる。

 絶対的にそうなる可能性が高いだろうなというのは推測の範囲内であるので、ここは上乗せが無くても、当座で頂いた資金がある為に、断る方向ですすめた方が良いだろう。と、結論づけ


「それでも、やはりその移管に関しては、お断りさせていただこうと」

「しかし、その実力があれば・・・」

「イリアス。もういいだろう」

「はいっ・・・ですが…」

「イリアス」

「わかりました・・・」


 首を垂れる格好で、口を閉ざす虎人、その状況を存在気迫が角煮にしてから


「アーネスト様。部下が大変失礼いたしました。移管の件に関しては、こちらとしてはこれ以上お話することはありません」

「・・・はい」


「では、イリアス。早速査定の方に行きなさい」

「……わかりました」


 虎人が、力なく席をトボトボという感じで部屋を出ていく中、存在気迫な方から



「査定が終わるまで、しばらく待っていただくとして……先ほどの説明の話がありましたが、こちらとそちらの業種との相互援助の話はご理解されていると思ってもよろしいのでしょうか?」



 これはアレか?

 暗黙の了解的な奴の事を指しているのだろうか?


「そういう話として、聞いてはいます」

「それならば話は早い。こちらとしてもアーネスト殿の実力をお借りしたい事が起きる可能性がないとも言えません。もし、その様な事が起きた際に、ご協力をお願いさせて頂いてもよろしいでしょうか?もちろん、職安組合ギルドや港湾事業の方には、話を通してからという形で、ですけれど」



 これがアレか。助手の方が言っていたお願い・・・という奴か。

 確か、お互いの事になるために、多少なりともは融通しておく方が後々よかったとかあった事を思い出し、また、港湾事業や職安組合ギルドを介してくるという事ならば無茶な話も振られないとは・・・思える。



「なんとも言えませんが、こちらの上を介してから、それから自分で出来る範囲でなら……」

「おぉ、それはありがとうございます。そう言ってもらえるならこちらも助かります。ではそうですね…、先日持ち込まれたガーランの素材買取の件、少し色を付けさせていただくよう話を進めさせましょう」



 そういって存在希薄はこちらが断りをいれようとする前に、受付に対してそう耳打ちをし、受付がこの部屋から出ていき、扉が閉まると存在気迫はこちらへと笑みをこぼしながら




「それでは、査定が終わるまで、世間話・・・でもしませんか?」




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