第26話 作業をしてみよう

 専用の作業艇に乗って目的地となる場所近くへと到着すると、さっそくとばかりに軽装備モードになりながら軽く関節機構の状況を確認する。

 特に今のところこれといった問題は無し、と、確認が終われば頂いた剣を急ごしらえの腰ベルトへと携える形で作業のための準備を整わせ、さっそくとばかりに「じゃ、いってくる」と告げると海中へと没しっていった。


 海中に入ってからも身体の状況を軽く確認してはみたが、やはりコレといった不具合的な物は無い為、シーの能力はゲーム内と同じ様な物であると認識させられるのだが、いかんせんあの性格を何とかならないものか…と、再認識をしながらも調査作業へと意識を向ける。



 とりあえずはMAP登録としてアクティブソナーを発しては周囲状況の確認を行うと、アチラコチラに岩礁というべきものが点在している岩場であるというのが確認はできた。


 そのままさらに潜航しながらも周囲状況を再度確認していくのだが、特に昨日の様な魔物が現れるという事もおきずに海底へと着底する事に成功する。深度としては、20mあるか無いか?という感じであり、太陽の明りがなんとか届いてはいるという明るさでもあったが…昨日探知できていた魚群らしきものが引っかからず、岩礁の陰に隠れている程度の魚類が存在している程度で、昨日の様に周囲を見渡す余裕が無かった事に比べてみても、静かな海という言葉が当てはめれそうだなと思っていた。


 そんな印象を受けながらも、海底調査を行うために探信音ソナーを放っては記録、探信音ソナーを放っては記録と繰り返す。


 脚部の推進器を使ってしまうと、あっという間に通り過ぎてしまいそうになる為、素潜り状態という状況であると、移動速度もたかが知れているものでもあり、その速度も相まってか、なんとも地味すぎる作業と手持ち無沙汰と感じてしまう。


 これでは"地形データを収集するだけという簡単なお仕事です。本当にありがとうございました”というフレーズを口ずさんでしまいそうになる。

 実際、生物ナマモノではもっと大変な作業だろうとは推測できるが、伊達に機械生命体やってない。朝飯前というか、もう楽すぎて暇という印象ですらある。


 こんな簡単な作業内容でプラスαのお給金がいただけるなんて、なんて素晴らしい職場なのだろうか、まるでホワイト企業というやつではなかろうか?と、そんな思いをしながらの作業だったのだ。


 それが、あまりにもの手持無沙汰になってしまっていたので、先ほど頂いた刺突剣を手に取ってみては横に薙いで見ると、よくある水の抵抗をしっかりと受ける事になり、今度は手首を使っての突き刺す動作を行ってみるも、コレも同じ様に水の抵抗を受けるが、それはあくまでも腕で動かしている分だけであり、その剣先の方にかかる負荷はほとんど感じないほどでもあった。


 その試し動作をして、なるほど…という印象でもあったが、これは射出機にでも固定して、射出した方が威力は上がりそうだなぁ…エアー射出方式にするべきか、それとも電磁式…は周りがこれだから不味いか。現実的によくある方法といえば、ゴムの様なものを使っての水中銃的な物だろうが、どうみても剣の形状をしているためにそんな銛みたいな使い方はし辛そうでもあるし、いっそのこと再加工しなおして何かしらの射出装置に引っ付けてぶっ飛ばす方が良さげか?いやしかし、これはどうみても貫きとおす代物、そうなってくるのはやはりドリル的な回転は必須だろう。こういう貫くものといえばやはり回転を加えるのが基本であり基礎であり重要である。そう、とてもとても必要な要素でもある。なら、回転をつけて射出さ出来る物って何かあったっけか?回転衝角とかいう恰好とでもいうのかね?あ、それはそれで美味しすぎる兵器に仕上がるだろうが、そいつでは吶喊するのが基礎的な運用になってしまう。しかし自分としては近接戦闘は苦手であるから、やはり射出系が良いよなぁ…あ、しかし近接兵装としても、やはり飛ばすという手は必須だな。最終的なギミックとしては外せない要素だろうしな。うむ。……ならそういう路線で考えてみるとして…



 そう運用方法を決めだし、倉庫デポットの図鑑から射出系の銃器で何か使えそうなものがないかと探し始めていた頃に、腰に巻いていた作業船と繋げていた紐が引っ張られる感触を感じた為、潜水作業の規定から上がれという指示のはずなので作業を切り上げて上がると、今日は初日だからと昼前にアガル形という事でオカへと戻されていた。






「どうだった、嬢ちゃん」


 身体が冷えているから暖をとれと、ほぼ強制的に火を起こしてある場所に連れてこられながら、状況内容を聞いてくる親方だったが「普通に岩礁みたいな物しかなく、岩肌があるばかりでした」と差し出された地図から、ここからここら辺はという感じで伝えていた。


「本当に岩肌と岩礁だけで、他には何も無かったんだな?」

「え、ええ、特に気になる程、ひどいという地形でも無かったですね」

「そうか…わかった。今日はもういいぞ」


 親方はそう聞き返した為に、そのままの状態をそのまま報告すると「何も無かったか…」「一応あげておくか…?」と何やら一人でブツブツと考え事をする形で、事務所の方へと消えていった。



 暖を取る形で一人ポツンとしているのも暇なので、MAPデータを照らしながら、先ほどの海底状況が立体的かつ色付きで再生されている内容もあり、色々とわかってはいる自分なのだが、これを伝えるべくアウトプットする術をどうしたもんだかと考えてみたりもする。

 そういう点では、手持ち端末型を持っていた生物ナマモノアバターの方が、逆に融通がきいたのかもしれなかったかなと、機械生命体だとほとんどが内蔵さてしまっている機能のため、こうなると書面というか絵を手書きにしてでしかないんじゃないかと、正直面倒だ。

 何か良い方法がないものかと思案していたが、昼を告げる鐘の音が鳴り響き、ワラワラと集まる人夫たちから「昼だぞ」「お昼、一緒にどうです?」と声がかけられた矢先


「お・ね・え・さ・まーーーー!!」


 工事区画の入り口の方から幻聴にしたかったけれども、MAP上に示されている支援サポートユニットの光点が、幻でもなく現実であるという事を突き付けている存在が、まるで磁石が引き寄せられるかの如く加速度的にまっすぐに向かっていており…人垣が二つに分かれた



「お姐様!お昼をお持ちしましたー!!シーの思いが一杯詰まったお昼をお持ちしました!」


 こちらが声をかけるまでもなく「シーが丹精込めて作りました!」と、テキパキと自分が座っている場所の前へとシートをひいては並べており、その内容は5段重ねのお重を広げた代物でもあった。

 その中に入っているモノとすれば、炒め物から煮込みものまで主菜としてはパンが別として出されてはいたが、これらはこれらで見た目からでも食欲をそそられる代物なんだろうなと。ただ、何故か食欲というものが沸かないんですけどね。


 そのシーがテキパキと並べていったソレらをのぞき込んでいた作業員からは「おぉ、すげぇ…」「豪勢だなぁ」「結構な量ありますよね」「ガーランの肉だろ?あれ」などと、その見た目もかなりおいしそうであり、量もかなり多くあったが一通り準備が終わったのか「お召し上がりください」と食器を手渡してきており、その食器を受け取ったとたん一転


「ところでお姐様、こいつらは何です?何なんです?私のお姐様に群がっている雑菌達は。お姐様、殺っちゃっていいですか?魚の餌にしちゃっても良いで……ホグァ」

「ヤメロ」


 かなり冷えた空気を作り出し、今にも得物を取り出しそうにしていたアホの子Sシーを頭部に行動を強制的に停止させるほどの威力で手刀を加える事で停止させると、「痛いです…」と頭部に手を当てながらこちらに視線を向けてきた。

 向けてきてはいるのだが、どことなく"嬉しそう"なのは気のせいだろうか…。


「あと、店の手伝いの方はどうした?」

「はっ!そうでした!このお昼をお届けに行くだけの許可はもらってきましたけれど、お姐様と一緒にお昼というのも捨てがたく……しかししかし、そうなるとお店の方を留守にしてしまえば、お姐様と一緒にいられなくなりますし…ぐぬぬぬ………」


 何かしらの葛藤とよべる物を口にして、思考を巡らせていたかと思っていたら、


「お姐様、申し訳ありませんが、シーは、コレにて失礼‥‥します………」


 そう結論付けたシーは、店に戻るという選択を取ったみたいだった。

 ただ、後ろ髪をひかれるかの如く、その場から後ずさりをしながらやって来た方角へと去っていくボロットSシーだった。



「なんだったんだ…今の…」「さぁ…」「けどかわいかったよな」「ああ」「お近づきになれないかなぁ」



 まるで嵐が過ぎ去ったかの様な、周りを置いてけぼりな空間を作り上げていた。一部怪しい言葉が聞こえてはいたが、聞かなかったことにして昼食をとる事にした。



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