第18話 処理をしてみよう

 "ギルの宿"というのは別名で、あのデカイ亭主が"ギルキル"という名前だったという単純な物だった。


 まぁ、そんな"ギルの宿"の裏手にある、馬房と井戸が存在する裏庭的な場所に、現在各人が持ち寄った簡易テーブルと椅子が並べられ、総勢数十名がひしめき合って肉と酒を食ってます。パッと見でも4・50人近くが所せましとたむろっている状態ではなかろうか。宿の食堂もいれれば、もっといそうではあるのだが・・・


 港湾工事の人たちにその家族みたいなのに、近所の家族子供連れまで集まってはしゃいでおり、あとから合流してきた親方と偉い人様まで来られて、こちらへと事情聴取を行いながらも、酒の席を楽しみ始める始末。



 なにせ、手に入れた肉が荷台4台分。総重量にすると目算で1tクラスか?

 これを一人で処理は・・・出来ないこともないだろうが、正直飽きると思える。特に見た目による満足感が多大な影響を及ぼすことは想定できる。


 それに、生の肉の為に、加工しなけりゃ日持ちもしない。

 自身の倉庫デポットに格納する事も考えれない事もないが、そうやって仕舞ったとしても、毎日、毎日、同じ肉、肉、肉、肉……駄目だ、無理だ。精神的に耐えられる自信がない。

 という事で、解体手数料と腐る前にふるまっちまえと思った次第である。



 もちろん、宿の客も含めてと、一部は宿に食材として提供するという形で。

 そうしたら、この裏庭を提供してもらう形になり、亭主と女将さんにも協力をしていただく話もついている。

 一部の肉を分ける事で話がまとまり、その際に「売り上げが上がるわ!」と、商魂たくましいお返事をいただき、その後は家族総出と近所の人たちを集めて調理に勤しんでおります。



 酒代も、酒屋が肉と交換という形で、40kgほど持って行ったが、その代わりに酒樽を5つほど置いていった。それでも儲けが出るらしい。どんだけ高級食材なんですかね、その肉。



 まぁ、そんなこんなで酒盛り開催中な裏庭で、その隅っこに逃げる様にしてその肉を食してみたら確かに旨かった。霜降り肉というモノで、レアであればあるほど甘味もあり、その中に少量の塩味がさらにうまさを引き立て、そして口当たりも柔らかくまるで溶ける様に消えていく。

 旨いという表現しか出来ない。軽く炙る様に焼いた薄い肉でコレ。

 肉厚なステーキなんて、もうそれ以上にとろける旨さ(物理)であった。


 本当にマヂで旨かったのだが、大体50kgぐらい食ったらもういらない…満腹で入らないとかではなく、その食感と味に飽きたというのが正直な話。あれだな、大トロも食べ続けたら飽きてしまうという贅沢な問題という所か。そういえば、休みなく食ってた時に周りからは「いったいどこに消えたんだ?」「胸だろ?胸」「ああ、なるほど…」という言葉が聞こえたり如何わしい視線があったりもしたがそこは無視である。


 しかし、これだけ大量に消費したかと思っていた酒盛りだったが、それでもまだ荷台に二台分ぐらいが残ってるときている……ウゲェップ……もういらん…


 そんな状況にうんざりしていたら「残りそうなら、保存食用に加工しましょうか?」という女手衆の提案により、その手間賃も加工肉を分けるという事で空いた酒樽の中を利用して塩漬け作業を始めていた。逞しいというのはこういう事を言うのだろうな。



 そんな宴をよそに「後は任ます」と告げ早々にその場を離れ、自身にあてがわれている宿の部屋へと戻ってきた。



 寝具の上へと座り込み、確認しておきたかったエネルギーの変換としては、高級食材なのか、それとも摂取量が多かったためかは解らないが半分まで回復はしており、とりあえずの目的は達成できてるなと確認しつつ、左腕の状況と腹部の穴をどうにかしないといけない。


 ここまでくると、オートリペア機能での修復はほぼ不可能。そうなると修復機材となるあいつ・・・を呼ぶ必要に迫られるんだよな…2ndキャラで。


 一応、修繕・修復用にと、専用のメンテナンスやリペアに特化させたサポートユニットを製作はしてある。


 してあるのだが…2ndキャラ以外では、プロというか職人的な機械的作業で工程を消化する様は、まさにパーフェクト!といいたくもなる程に完成されていて、個人的にも使い勝手がとても良い。のだが、何故か2ndキャラの時に呼び出すとちょっとした、いや、かなりおかしな挙動をしてくるため、ほぼネタキャラともいえる2ndキャラで遊んだ時は、メンテナンスを行おうと思えばサポートユニットを呼び出さずにホームへ戻ってからそこに設置されているメンテナンスキットで補修を受けたりしていたのだが、今だとそのホームにすら戻る事すらかなわない。しかし、現状の破損状況でボロを纏っているというのも気が済まない。戦闘でボロボロになって勝利!という王道パターンは消化したのだから、次の話の時には修繕が終わってなければおかしいだろう、いやまて、リペアVerというのもあるか。こう肩から布をかぶせて破損部を隠している状況というのも、ある意味アリだよな。好都合的に破損部は左側に集中してあるわけだし、って、まてまてまて、それはやはり2ndキャラ以外でないと格好つかないのではなかろうか?下手に生物ナマモノに寄せて作ってあるキャラでは、破損部を隠しているというのはナシだ。そう、ナシだな。しかし、いまはホームに移動などできないと、2ndキャラであのサポートユニットを呼ぶんだよなぁ・・・気が滅入るというか、絶対アレな状態になるんだろうなぁ・・・背に腹は代えられないとはいえ、ちょっとなぁ・・・けど、呼ぶしかないよなぁ・・・


 しぶしぶ、諦めの境地の心境でメニューから"call"を選択し、"See"を選択する。


 選択すると、座っている目の前に円陣が現れたかと思えば、背の高さ的には15・60cmぐらいの女の子的な体躯をしており、バイザー型の頭部形状に白衣姿に近いコートの様な衣装をまとい、その衣装の所々に赤い十字のマークを付けた姿のユニットが、まるで周囲の光源が集まるかの様に現れた。


 リペア系統といえば、ナース的な何かを組み込まなければと製作しただけの事はある。この登場の仕方もゲームの時と同じなのね、と少し感心していたのだが、ただ・・・ただね・・・これから対面すると思うと、ちょーっとねぇ…



「お呼びになられましたか?アーネスト様」

「あ、ああ」


 腕を前にし、まるで執事風な綺麗な一礼のままでのご登場なのだが、その挨拶に返答すと、その礼の姿勢から急に顔を上げてこちらを確認、したと思えば肩をワナワナと震わせ……あ、嫌な予感がする。




「や、やっぱり!そのお声はアーネストお姐様だァァァァァ!!

 シー!お会いしとうございましたぁぁぁ!!」



 と、叫びながら勢いよく抱き着いてきたかと思えば、自分の胸元にある二つの山の間に顔をうずめては、身体をくねらせて頬ずりし、その手はしっかりと後ろに回して尻をこねくり回す様に触っている人型の物体がそこにいた。




 2ndキャラの時だけ、どうして性格がコウナル




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