第13話 本登録してみるは・・・
「いらっしゃいませ!職案
丸ノブで引き戸という罠だろうとしか思えない扉を開けて中に入った途端、威勢の良い声が耳に入ってきた。
ロビーともいえる場所には、数名の
そんな中、先ほど威勢の良い声を発していたのは、昨日受け答えをしてくれた受付嬢であり、とりあえずあの場所へと赴くかと進み、その空いている受付に到着するやいなや、
「こちらへは初めてのご利用ですね?」
と、営業スマイル?とでも言う表情をして聞いてきていた。
朝(もう昼になりそうだが)からこんなテンションを維持するとか、ほんと大変だなと思いながらも、
「いや、先日の手続きの続きだ」
「はい?先日の手続き‥‥ですか?」
「この仮札だ」
疑問という表情をしてくる受付嬢に、簡潔で用件を伝えるべく、仮札を取り出してカウンターに乗せてみると、その仮札を手に取り何かしらの確認がおわると、
「この仮札は、先日アーネスト様にお渡ししたもので…」
「そのアーネストが、私だ」
「えっ?」
そんな言葉を発したかと思えば、上から下へと視線を往復させた後に
「えぇぇぇぇぇっ!?」
先ほどまでのプロ的な対応から一転、かなり大きめのリアクションをとってくる。それはまるでリアクション芸人の様だ。
「アーネスト様は、女性の方だったのですね」
「いや‥‥」
またその事かと思いつつも反論しようと思ったが、説明しようにも理解してもらえるのか?という懸念が入り、さらに深く説明をする必要があるのかと思うと、正直言えばメンドクサッという感情がふつふつと湧き上がってきた。ので、
「まぁ、そんな所だ」
もうどうとでも受け取ってくれという匙を投げる以上の返答で切替しておく。
「はぁ‥‥しかもお美しいですね。肌もスベスベぽいし、その秘訣は一体何なのでしょうか?」
ここの
特に肌に関しての質問が多い気がする。女性とはそういう
それよりも、その質問に対する回答を「人工物だから」とバッサリ言ってしまうと、さらに追及される恐れがありそうな雰囲気でもある。ならば曖昧にしておくべきが正しい選択ではなかろうか?と
「秘密だ」
「秘密……ですか。いつか聞き出して見せます。
それでは、早速なのですが登録の準備は出来ています。
こちらへついて来てください」
そそくさと受付嬢はそのまま、その自身の職場である受付から出てくると、その脇にある通路へと進み、再度「こちらです」と案内されるがまま自分もその後に続く
「現在の本登録が主流になる前に使ってた方式なのですが、
時間的なお手数はそんなにかかりません。が、少々場所を取るものでして‥‥」
軽く説明を受けながら目的となる一室へと案内された。
その一室にはいると、窓が一切ない個室といった物であり、その部屋の中央に腰かけ様の椅子がひとつポツンと存在し、その部屋の四角には、何やら怪しげな柱が立っている…
「すいません、その中央の椅子に座って頂けますか?」
流されるままにその指示に従って椅子に座ると「そのままで動かないでくださいね」という言葉と共に、受付嬢は部屋から退出していった。と思えば、その次の瞬間には、部屋全体にフラッシュの様なまぶしい晄が六回ほど光、何だ何だ!?と思えば、
「はい、終了です」
そう告げながら受付嬢が部屋へと入ってくる。一体、何をされたんだ?身体の状況表示には何かしらの変化が発生したという影響というものもなく、腑に落ちない疑問があったが受付の場所へと連れ立って戻る際に
「先ほどの事を簡単にご説明させていただきます。
これはシャシンという物を作成する物でして、
で、シャシンとは、言うなれば瞬間に絵へ落とし込む魔道具を使い、
絵へと落とし込んだ物で、それを利用してシャシンを撮影しました。
そのシャシンを発行する証明書に貼り付ければ、正式な書類となります。
通常は魔力や血液で登録する方法が、もっとも偽装が難しく確実なのですが、
一昔前までは、こちらのシャシンという物で行っていたそうですよ」
「なるほど」
「前回こられた時みたいに、兜をかぶってこられてた場合、
素顔になって頂く必要があったのですが、素顔で来られていたので助かりました。
これで身分証の提示がある場合、正式な証明書と素顔を見せて対応してください」
んん?
そんな簡単な説明を受け終わるころには受付に戻ってきており、「証明書を作成してきます」と、再び席をはずしていった。
っていうかまてまて、つまり身分証明として登録したのは、この2ndキャラの「顔」という事になるのか?つまり1stキャラだと身分証明として利用できないというか、怪しい奴になるという事でいいのか?てっきりファンタジー要素的な別の何かがあると思えば、ある意味リアルな方法で対応するのかよ。おいおい、聞いてねーよ、それじゃ何か?仕事するにも登録したこの2ndキャラでなければならないという事になるのか?いやいや、そこは確認する必要があるだろ、というかしないとまずいだろ…
と、思いを巡らせていると
「お待たせしました。これが就業証明書となります」
目の前に出されたのは、一つのカードサイズともドッグタグともいえる微妙な大きさの物だった。
「ご説明します。そちらの証明書には、特殊な魔法加工が施されております。
こちらの専用の端末にかざして頂くと…」
と、かざされた途端に、その空中に顔が映し出されて・・・ってスゴイ!ホログラム的に顔がそのまま表示されてる!うわ、すっげーほしい!この端末!!ほっしっ!!
「普通なら、付属の端末に手をかざして頂く必要がありますが、
アーネスト様でしたら、こちらの証明書のみで表示される形となります」
あっ、ああ、なるほど…
あぶない、ホログラム生成システムに気を取られて話をスルーする処だった…
「また、この証明書には色々な
お役立てください。
また、紛失した際は再発行が行えますが、再発行手続き費用が発生します。
ご注意ください」
視線はホログラム的に2ndキャラの素顔を維持して表示している端末を、ほへーという感じで眺めている間に、説明がなされていた様だが理解はしている。
「ご質問はおありでしょうか?」
「あー、昨日の姿で来ても、この証明書は使えるのか?」
「はい、就業案内の処理作業に関しては、ある程度省略されますので、
昨日の恰好でも問題はありません」
その点を聞いて、少し安心したが
「ただし、本人確認が必要な際は、素顔を見せて頂く必要になります」
やっぱりか、一応は予想した事をサラリと流してきちゃったよ。
1stキャラのヘルムが脱げないというか、そもそもあれが素面だから困るモノなんだが、そこらは今後どうしたものか
「ほかにご質問はおありでしょうか?」
おっと、聞きそびれるとこだった
「仕事依頼の受注方法などはどうすれば?」
「はい、あちらの依頼掲示板から選択してこちらの受付までお持ちください。
それにより、
その処理を行った書類を依頼主の元に持参していただく形となります。
依頼が完了した際は、その発行書類に完遂の専用サインをいただき、
持ち帰っていただければ、
内容的には、よくあるアレだな。
「了解した」
「ほかにご質問はおありでしょうか?」
営業スマイルとでもいう表情で再び聞いてきてはくれるのだが、今の所これ以上聞く必要もないなぁと思いながら
「とりあえず、今のとこはこれ以上はない」
「はい、わかりました。それでは、今後ともよろしくお願いいたします」
深々と営業的なお辞儀ともいえる礼をされ、さっそく依頼掲示板へと足を向けた。
移動しながら思う事は、あの立体描写が存在してるってことで、あの端末がほしくなるな。どういう構造になっているのか調べてみたいな…
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