異世界召喚~ただし身体はVRMMO種族の機械生命体~

zaq2

第1話 召喚されるは・・・



「ようこそ、"勇者様"。我らの召喚に応じて頂き、誠に感謝いたします」



 目の前にいる綺麗な身なりの女性と思しきキャラクターから、その様な言葉を投げかけられていた。



 "これが新章の始まり方なのか?"という興味と疑問を持ちながら、視線を周囲へと動かしていくと、その視界に入ってきたモノといえば、現実世界の町中でよく見かけるありふれた学生服を来ている四人の男女の集まりと、リクルートスーツ姿の女性が一人、そして頭部にタオルを巻いては割烹着姿の男性が一人といったぐらいであった。


 しかし、その他にも視界に入ってくる"気になるモノ"が存在していた。


 その"気になるモノ"は、まるで中世でいう所の西洋の鎧甲冑姿のキャラクターたちが、まさに物々しい姿恰好で自分たちの周囲を取り囲むように立ち並んでいたりし、その他の"気になるモノ"が、その輪の一部で床にまで垂れさがっている布服の様な物を着ているキャラクター達であった。


 そのキャラクターたちが、先ほどの声をかけてきた身なりの整っている女性の周囲にも、まるで壁になるかの様に並びで配列されているというぐらいだった。



「勇者?」

「召喚とか言ってなかった?」

「言ってた」

「マヂかよ・・・」



 学生服を着ていた学生の集まりから、静まり返っていた空間を打破するかの様に、はっきりと聞き取れる声でその様な会話をしているのが聞こえてきたのだが、自分としてその学生服の集まりを見て思う所があるとするならば、"現代風なアバターとして、かなり作りこんでるなぁ"と関心していた。


 それと同時に、現実と同じ恰好の人間ヒューマンタイプの生物ナマモノを作成するのはどうなのか?という感じの"もったいない"的な個人的な感想があった。


 なにしろVRMMOというゲームの中なのだから、他にも選べる種族が多種多様に存在するという仕様なのに、わざわざリアルとまったく同じという設定の人間ヒューマンタイプの生物ナマモノを選択する事がもったいなさすぎるとしか言えなかった。


 そんな考えをしていたら



「おひとり、立派な鎧姿の騎士・・・・・様もおられる様で‥‥」



 先ほど、言葉を投げかけていた身なりの良い女性が、にこりとした表情でこちらへと視線を向けてはそう伝えてきていた。



 というかだって?あぁ?



 このアバターとして作ったのは、メーカーが配布しているアバター製作専用ツールを使って、わざわざゼロから外観を自作し、ベースとしたのは重兵装を基調としながらも、各部の構造部は考えに考え抜いて製作した自慢の装甲なんだが?"鎧"と一言でまとめられた感じで言われるのはちょっと心外だ。まず、この光沢は追加パッチで登場した"エネルギーシールド"をより効率的に展開する為、耐エネルギー兵装の潤滑添加物を転用してようやく作り出したに対コーティング材を材料としているし、さらにこの装甲のエッジの角度の追及は曲線よりも直線的なデザインをベースとしながら、物理的な直撃をそらすための傾斜装甲を要所要所に組み合わせているし、兵装のマウント機能を増設させる為に最低限の範囲を設定しながらも、各部位にもしっかりとマウントできる箇所を随所に網羅し、さらに背面にはバックパックを換装する事により多種多様の戦局に合わせ、より多方面に対応できる様に兵装が換装できる仕様にもしてあり、例を挙げるなら支援火砲といわれる重兵装を取付けたとしても、活動に制限が加わらない様にと余剰出力をも十二分確保して、さらに重兵装からくる質量による機動力の阻害を脚部の反重力的なホバーユニットで補助する事で、戦線の変化に伴う前線変動にも遅れる事もなく対処できる様に創意工夫を少なくともしており、それでこのサイズ、2m50の高さに収めきったというのが奇蹟ともいえるという代物なのに‥‥これだから女って奴は、ロボ道の一つである重兵装区分ってモノをわかってない、この素晴らしい機能美に溢れる各部の‥‥‥‥




 ん?



 頭の中で自身のロボ道(重兵装の章)という"ロマン"という名の蘊蓄をタレ流れしている時、周囲からの視線が次々と自分へと集まっている事にようやく気づき



「ロボだ」

「ロボットだよね」

「ロボだね」

「ロボだよな・・・アレ」



 こちらを見ていた学生さんたちが、自分の姿を見てからそれぞれに見た感想をそのまま言葉にしていた内容に少し違和感を覚えた。


 普通にゲーム内にいる人なら、この身体の事をロボなんて言わない、機械生命体とストレートに種族名を言うか、ほとんどは別称(蔑称も含む)の役立たずジャンクとか呼ぶはずなのに‥‥




 そんな事よりもだ。




 "ロボと呼称される事が、なんて甘美な響き"に聞こえるのだろうか‥‥‥



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る