Going ago/Coming ago 10
「火薬の防湿はしっかりとしてるな。4分の1は使い物になりそうだ」
こまごまとした取り決めの後、箱ごとこの火縄銃を受け取った。
木箱に入っていた火薬は1つ100グラムほどのものが12セット。
4×3で底に敷き詰められていた。1.2キロか。
5グラムあれば1発撃てる、それでもお釣りがくる。
いくらしたかは知らないが、麻薬の取引みたいだな。最初だけご奉仕価格とか。
まあ、結局死蔵されたわけだが。
火薬セットは4つほどカビが生えていたので、取り出しておいた。
1つ1つ隔離して乾燥させる必要がある。
こういう時は冬であることに感謝する。湿度が低いため、乾燥の効率がいいからだ。
元々火縄銃というのはヨーロッパ貴族が狩猟用に用いた銃がそのまま戦争用に転用されたものだ。
しっかり構えて使うための肩当てが短いのもそのせいで、取り回しはいいが構えるのは苦労する特徴がある。
ザックリ言えば火縄銃はタダの筒だ。
故に結構無茶も効くが、安全を重視するに越したことはない。
製鉄技術にも期待できないし。
意外なことに、筒の中は驚くほど錆が無かった。
まあ貰ってから1度も使ってないらしい。
よほど前の持ち主がメンテナンスを重要視していたのだろう。
まさに日本を縦断してきた代物だ。
海岸沿いに海を渡ってきたのか、それとも陸路か。
実に興味深い。
外側は主の持っていた鹿角で赤錆を落とし、木綿の布でひたすら擦る。
苦肉の策で使ってみたら以外に使いやすい鹿角。欠片でも十分だった。
ボロ布でも根気よく擦ればなんとかなる。
しかし昼はいいのだが夜になると明かりが囲炉裏しかないので辛かった。
目が良い方だったのが幸いしたな。
結構四苦八苦しながらそんなこんなで整備を終わらせたところでタイムアップ。
城の一角、弓の練習場でお披露目となった。
正直試射とかしたいのだが時間がないのでぶっつけ本番である。
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