Going ago/Coming ago 04
「やはり見当たらないなぁ」
「おっかしいなぁ、確かにここらだったと思うんだども」
少年と少女は晴れた日に探し物をしていた。
少年の元々の持ち物を探しているのだ。
「持ち去られた?」
最も有り得そうな予想をする。
「いや、滅多なことで人の通る道でねぇし、この時期なら猶更、まさか」
しかし、主たる少女は否定し、心当たりを語る。
「はい?」
「いや、見つけたとき鷹がこの方向に飛んでいったのさ」
まあ非現実的である。
獣に知性があるか否か、など論じても意味などないのだから。
「なら、鷹が拾っていったのかもしれませんね、くしゅん!」
言い淀んだ少女に代わり、少年は予想を言葉に。
しかし、その後に体が冷えたのか、くしゃみをする。
「寒くなってきたし、そろそろけぇるべ」
「ありがとうございます。そういたしましょう」
少女に古い厚着を借りたとはいえ、未だ冬。少年は寒さに身を震わせる。
足早にその場を後にした。
帰宅後。
「さってと、お城に行く用意さねば」
「ああ、今日でしたか。しかし、何を召していけばよいのでしょう」
「最初の普段着で十分でしょう。お貴族様」
揶揄う様に少女は標準語に近い言葉を話す。
「むう、言ったではないですか。
今の私は藤丸、貴方の家臣であり、それ以上でもそれ以下でもないと。
というか、そもそも貴族ではありませんよ私は」
「はいはい、そういうことにしておきます」
少年は名を変えた。
籐橘源平の系譜であることは隠す。
少年は無用に目立つことを避けたいのだった。
しかしまあ、難儀な世の中である。
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