Going ago/Coming ago 02
家臣となって5日。
離れに人が訪れた。
「姫様。居られますか?」
藤崎城主の娘ならば城下まで出かけて行ったばかりである。
「申し訳ない、ただ今留守で」
「ん?オヌシが姫様に拾われたというもっけか?」
「そうですが、城の方ですか?」
身形は立派な召し物である。有力者の一角であるのだろうか。
訛りが酷すぎて現代語訳せざるを得ない。
「まあの、姫様に言伝を頼まれたので出向いたのだが」
「城下に出かけております、寒いでしょうし中へどうぞ」
「おお、これはありがたい。最近は特に冬が厳しくての」
戦国時代は世界的に見ても寒冷な時代であった。
多くの民が飢え、世は荒れた。
それは江戸時代に最も寒い時代を迎える。
「やはり小氷河期ですか」
「ん?なんだべ、それ」
「ああいえ、なんでもございません」
できることといえば天に祈るくらいであった。
「ただいま戻ったべ、藤丸」
「おかえりなさい、いかがでした?」
冬は皆生活が厳しい。
作物や家畜などが育たないからだ。
民は1年をかけて物資を蓄え、冬を越すのである。
今年は1人増えたので、この家の備蓄に不安が残るらしい。
よって、村の衆に何か物資の余裕があれば交換してもらうべく交渉に出ていたのだ。
本来ならば自分で、そうでなくともお供に着いていくのが筋なのだが、留守を任せられてしまった。
「ダメだね、村の人たちも蓄えはあまりないと」
「そうですか、ああ、お客様です」
皆自分の余裕を削れるわけではない。
故に、前もって既に予想はしていた。
狩りでもするか。
それとも川で魚を取るか。
この時代では表向きよくないこととされてはいるが。
生きるためには仕方のないことであった。
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