第27話 迎える言葉

村を目指す最中、背中に意識を向けていたのだが、幸いにもラケルからは規則正しい穏やかな寝息が聞こえてくるのみで、状態が急変することはなかった。


リプスの魔法が最悪の状況の進行を一時的だとしても止めることができたのだろう。


村に近づくにつれて、入り口に人が集まっているのが見えてきた。


というか、あれはほぼ村人全員だな。


「おかえりなさい!!」

「レオンさん。無事でなによりだよ!!」

「おかえり~!」


村の人達が俺を迎えてくれる。



”おかえり”



か……。



二人からもかけてもらえたし、今だってこんなにも沢山の人からかけてもらえている。


暫く聞いてなかったな……この言葉……。


温かい。


だが、村の人達には、真にこの言葉で迎えてあげるべき人達がいる。


その為にも真相を知らなければ……


俺は背中に少し視線を向ける。


「その人はどうしたんだい?」


俺の視線に村の人達が、俺が背負っている人物についてきいてきた。


「城で色々あったときに、保護したんだ。だが、容態が良くない……手当をしたくてな」


「まぁ大変! 誰か! すぐに準備を!」


「大丈夫だ。先にイヴに準備するように伝えてある」


「ああ! それでね。イヴちゃんがすごい速度で村の中に走ってきてたのは。その人も心配ね。さ!中へ」


「ありがとう」


「でも不思議だね~。イヴちゃんも、リプスさんも、さっきまで子供達と一緒に広場で遊んでたと思ったんだけど……」


村の人達に促され、とりあえず村の中へと入っていく。



ラケル……なんとか持ち直してくれ……


間違いなく辛かった……なんて言葉だけでは表せない日々に耐え抜いてきたであろう、今ここにいるお前自身のために。


そして、この村の皆のためにも。



俺は心の中で強くつぶやく。



そんな俺の気持ちを察したのか、俺の腕に優しく手を置いたリプスが、ゆっくりとうなずいた。



「レオン様~~!」


ちょうどその時、元気な声が俺を読んだ。


声のする方に目を向けると、イヴがこちらに走ってきているのが見えた。


その横にいるのはエマか?


仲良く手をつないでいる。


村に来たばかりの時には、面白いのもあったのだろうが、恐らくは他者に触れられたくないと言う思いから、子供達をかわし、逃げてたイヴが手をつないでいる……


俺がいない間に一体何があったのか……


そして……エマが犬耳としっぽを模した飾りをつけているのは何なのか……


二人の間に強い絆のような物が芽生えているのは明白だ。


「イヴ。フレムさんに伝えたか?」


「うん! 準備をしておくから集会場に来てって!」


「わかった。ありがとな」


俺はイヴの頭を優しくなでる。


「えへへ~」


そんな俺の行いに、イヴのしっぽが嬉しそうに左右に揺れる。


「あれ?」


「ん?」


イヴと一緒に来ていた犬耳エマが、俺を見て不思議そうに首を傾げた。


「どうした?」


「え? う、ううん! 何でもない。気のせい……だと思うから!」


「そうなのか?」


「うん! ママが待ってるから。 いこう! お兄ちゃん!」


「わかった。よっと!」


俺は少し体制が崩れたラケルを背負いなおすと、手をつないだままのイヴとエマの先導に続き、集会場へと歩みを進めるのだった。



―――――――――――――――――

あとがき


以前、読者の方から、リプスとイヴって、某大人気漫画、毛髪脱色剤っぽいタイトルに登場するキャラのような超加速的な能力持ちなんですか?

という質問をいただきました。


村に帰ってきたレオンに対して、

嬉しさのあまり、全力ジャンプを横軸方向にしたのがイヴ。

縦方向にしたのがリプスと言った感じですね。


色々な作品で、持ち主の呼びかけに答えて、離れていても飛んでくる武器ってあると思うのですが、二人の場合は武器側からも持ち主の元に戻ってくる……そういうことです。



悪く言えば、呪われた武……ヒエ


ですよね! 愛ですよね!! 愛!!!


ヒエ……

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