死なない僕と神眼の魔女

@sirataki-oden-oisii

プロローグ

「あなた達クビよ。」


その言葉に私だけでは無く他の者達も狼狽える。最初は耳を疑ったが聞き間違いでもなく、お嬢様の冗談でもないらしい。

お嬢様はいったい何を言っておられるのか!


「おっお嬢様!何を仰っているのですか!」


「あら二回も言わないと分からないの?お馬鹿さんね。もう一度言うわ、あなた達は今日限りでクビよ荷物をまとめて私の屋敷から出てって頂戴。」


彼女、シノン=ロー=ヴァンはにっこりと見惚れる様な笑みを浮かべて自分を見る執事やメイド達につまらなそうに、大層つまらなそうに言った。


「だって父上は死んでしまったのよ?私が今の所のヴァン家の当主。いえ、結婚をする気もないから死ぬまで一生この家の当主ね。そして私の物になったヴァン家・・・私の物よ?なんで代々仕えてくる役立たず共を私の物であるヴァン家に仕えさせなきゃいけないのかしら?今までの関係は全て切り、私は私のためのヴァン家を貫いていくわ。」


全員がシノンを除いて固まった。何を言っているのだ?と

今まで大人しかったシノン様はそこにはいなかった、今目の前にいるのは無邪気さに彩られた瞳を持つどこか歯車が噛み合っていない少女。


そして、ぼうっとシノンの両眼に青い光が灯る。

それは幻想的でありながら、恐怖心や不安を掻き立てられる瞳、また口を楽し気に開いてシノンはさぞ愉快に言う


「あらあら、皆怖がっちゃってどうしたの?ウフフ、そうよね?今まで誰にも見せてこなかったんですもの。さあ早く出ていきなさい?それとも怖くて動けないの?そうね・・・」


シノンの瞳の青い光が揺らぎ強まったかと思うと、もう無理だった。その場に残る気持ちすら一瞬で霧散させてしまうような何かが心の奥底から湧き出して我先にと一目散に屋敷から逃げてしまった。


「ウフフまるで子供みたい、それにね?敵意、害意、悪意。そんなのが渦巻いてるこんなとこで生きてたら息が詰まっちゃう。」


真っ白な肌に、真っ白な腰まである髪の毛。青い光が灯った瞳。

スレンダーでいて出るとこは出ている女性なら誰もがうらやむスタイル。

全身を宵闇を思い起こさせる黒を基調としたドレス。


絶世の美少女、シノンは笑う。


「さあ、始まりよ。」


――――――――――


ぐちゃぐちゃ、びちゃびちゃ。

目の前の光景に少女は息をのむ、お父様がお母様が目の前で奇怪な姿をした人間大の蟲に貪られている。

もう何が起きたのかわからなかった、王都に呼ばれ家族で馬車に乗り出発した


気が付くと馬車は宙に投げ出されていて下にはぽっかりと奈落が口を開けていた。

お父様がお母様が命を投げ打って私を助けてくれた、しかし周りは奇怪な蟲の群れ、


後ろでは無残な姿になった馬車にランタンが燃え移り周りを照らしていた、その明かりのおかげで私は周りの光景が見えてしまう、お父様が、お母様が。


そして目の前にいる巨大な蟲、お父様やお母様に群がっている蟲なんてまるで砂利みたいに小さく感じてしまうほど大きな蟲。その蟲が動きだしたような気がした。


「~~~~~~~~っ!」


私は半狂乱になりありったけの自分が使えるであろう魔法を叩き込んだ。

私は今までの私たちの血筋のなかで歴代一番の魔力総量と魔術の腕を持っている、蟲を殺すため魔力が切れるまで放った。もう何も考えずに放った。そして蟲が息絶えた・・・


私が殺せるような存在じゃない、もとから重傷を負っていてそこに私がトドメをさした?

しかし殺したのだ、その事実で私の身体から力が抜ける。

このまま蟲に群がられてお父様やお母様のように貪られるんだとおもった・・・


殺したはずの蟲が動いた。


私の頭の中は真っ白になる。そして次に恐怖が込み上げてきて、歯をガチガチと鳴らす。

逃げようとするが身体が思う様に動かない、顔を涙や鼻水、涎でぐしゃぐしゃにして、年甲斐もなく漏らしてしまう。


蟲が襲い掛かって来た。


え?いや違う。蟲が私の身体に当たった瞬間私の身体にじゅくじゅくと飲み込まれていく・・・

なにこれ!いやだ!いや!きもちわるい!


必死にもがく私に構わず私の身体は殺した蟲を飲み込んでいく、そして私の身体がだんだんと蟲になっていく。


「いやだ!いやだ!たすけて!お父様!お母様!わたしこわい!こわいのっ!やだやだやだやだやだ!ばけものなんかになりたくない!いやだ・・・!いやだよ・・・、いや・・・。」


私の意志は流れ込んで来る蟲の本能にあっという間に飲み込まれる。

私は化け物になった。


―――――――――――


思う、何時からだろうと。

複雑に入り組んで迷路のようになったこの路地裏はもう自分の住処だ。

言葉は話せない。でも解る。獲物が話しかけて来たりするのも解る。

言葉の意味は理解する事は出来るが話せない。


いいのだ。


必要ないから。


臭いが漂ってきた。壁を駆ける。臭いの方へ。獲物の方へ近づいていく。

お腹減った。お腹減った。お腹減った。

見つけた。


そこには1。2。3。さんにんの獲物がいる。音を消し。気配を断ち。一瞬で距離を詰めた。

1の首を手に持ったナイフで切る。頭が地面に落ちて。血が噴き出し体が倒れる。

うん。2と3が気付いた。


「ジャンが殺られた!」


「何だコイツ!・・・っ!まさか人喰いか!」


2と。3が。剣をむく。・・・。違う。違う。抜く。

遅い。3が。死んだ。あっ。2逃げる。追う。遅い。


2も。しんだ。死んだ。お腹空いた。頂き。ます。ます。


ガツガツ、むしゃむしゃ、ガリガリ


1と。2で。お腹。いっぱい。いっぱい。3いらない。捨てる。

このまま。


今日。もお。いい。いい。いいの。寝る。家帰る。

3。もったい。ない。ない。腕。もぎ。もぎ。持ってこ。持ってこ。


数年前から王都の路地裏には人を襲い、喰らう魔物が出ると噂になっている。

いや、実際数人が行方不明になったり死体や痕跡が残っていることからいるにはいるのだろう

しかし姿を見た者はいない。


――――――――――――


「へーい!れーでぃすあんーどじぇんーとるめん!いえーい!パチパチ!」


可愛らしい少女が無邪気にはしゃぎまわっている。

少女は教会の祭壇に登って置いてある道具などを蹴散らしながらくるくるりと踊る。

少女を見上げる様に縄で縛られているのは数十人の子供達と、数人のシスター、そして神官だ


「さぷらいーず!いえあっ!」


女神の像を引っこ抜き少し離れた所に居た自分と同い年の少女に投げつける。

真っ赤な花が咲いた。その光景に他の子供たちは恐怖で泣き出すが、口を縫われているので声を出せない

無理に出そうとすると縫われた傷口が広がり血があふれる。


「おうおう、泣くなよ!ぼーいみーつがーる!」


少女はさも楽しそうにまた小躍りする。

そして1人のシスターを持ち上げ教会を護衛していた兵士から殺して奪った槍を、尻から突き刺し口から出す

そのままオブジェクトの様に飾るのだった。


「お次はそこの少年!ちょっとおいでうんとこしょっと!」


少年を教会の数10メートルはある天井スレスレまで投げる。


「次そこの子!」


次は少女を掴み落ちて来る少年に向かい全速力で投げた。

お互いにぶつかりぐしゃっと破裂して血が降り注ぐ

それを少女は歪んだ笑みで楽しそうに大声で歌いながら血が降り注ぐ中踊る


「あはは~!超超超超超楽しぃ~~~!やっべ!涎たれた!きゃはははは!」


血塗れになりながら笑う、歌う、踊る

本当に心の底から楽しそうに、そんな少女を見て口を縫われた神官は思う。


『悪魔だ・・・。』


んじゃ次はと少女が品定めをする。シスターでいっかと適当に決めて次のゲームを思いついたようだ・・・

沢山のハサミを持ってくると一切の躊躇無くシスターの足に突き刺した。


「ハリネズミゲーム!ここに全部あるハサミが刺さっても生きてたら助けてあげる!」


少女は笑う、愉快に。



























「あっ死んだ。」


**********


後書きです。小説を読もうの方にも投稿させてもらってます。

あっちの方とこっちの方で後書きが違います。たぶん。

自分は後書きを掻くのが好きなんですよ!掻く?掻く!?

では初投稿お手柔らかに・・・

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