漆黒の骸討ち
ゆでん
プロローグ 一歩目
「初代黒の骸討士推薦書類・・・。本物の様だな。」
壮年の髭を生やした男が、持っていた書類は机に置き、隣りの青年に視線を向ける。
「もう五年も前のものですか。よく掘り出してきたものだ。」
青年が、正面、腕を後ろに組んで立っている少女を睨む。
「
少女の回答に、壮年のほうは視線を落とし、二枚目の書類に目を通しながら言葉を向ける。
「君の師匠は随分と用意の良いだったようだな。名前の欄に既に討士名が書かれておるよ・・・。
「両親は居ません。母は去年骸に成りました。父親は・・・行方知らずです・・・。」
視線を逸らした漆を、青年が睨みつける。
「何か隠しているのか?正直に話せ。」
「・・・まぁ、いいだろう。それ以外で不明瞭な点は無いしな。それでは漆君、書類審査は合格。実技審査は既に先代の推薦があるため免除。残りは筆記だな。」
「まぁ、基本動くだけの貴様らに筆記など意味があると思えないがな。」
「私も同意見です。
「・・・チッ!」
香椎と呼ばれた青年は立ち上がり、部屋を出て行った。
「・・・若いのは沸点が低くていかんな。さァて漆君、君に一つだけ聞きたいことがある。これは他の骸討士にも聞いていることだ。」
「なんでしょう。
漆は後ろ手に腕を組み、胸を張って姿勢を正す。
真島と呼ばれた壮年の男が
「君の大切な人、恋人、親、兄弟、友人が骸となってしまった時、確実に討つ《ころす》事は出来るかね?」
漆は組んでいた手を放し、仁王の
「大切な人が骸になってしまえば、"それ"はも骸であり、私の標的に他なりません。」
「・・・私は昔、大切な人を撃った。今でもあの人が骸だったらと、今でも思う。」
静かな沈黙のあと、真島が口を開く。
「なるほど・・・。それでは筆記、頑張ってくれたまえ。」
漆黒の骸討ち ゆでん @yuden888
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