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「心配性か」
そこには“母親”のニ文字が並んでいた。
「大丈夫だって」
と、指を滑らすと電話越しに聞き慣れた声。
「ちょっとアンタ、大丈夫なの?」
挨拶もなしに、どこか焦ったような声が聞こえてきた。大学生になって家を出たと言うのに、母親は心配性すぎる。朝起きることくらい、もう少し信頼してくれてもいいと思うんだけど。
「大丈夫だから、もうちゃんと用意してこれからバス停向かうとこ」
「本当? 本当に大丈夫なのね? 用意出来てんのね?」
「マジだって、マジマジ。オレだってそれくらいもう余裕で出来るって」
「絶対ね? お母さん、もうアンタの事起こしてやれないんだからね? 分かってんの?」
「だから起きてるってば」
これだけ言っても母親は安心しないのか、心配したような言葉が続く。もう完全に起きてるし、用意できてるし、ちゃんと出来てるし。なにも心配することないって。
「分かってんの? もう八時半過ぎてんのよ?」
「いや、だから四十五分のバス乗るから」
「分かってんの?」
こんなにも大丈夫だと、平気だと言っているのにどうしてこうも言葉を続けて来るのか。
「だから大丈夫だって!」
しびれを切らして声を荒げながら手を勢いよく着くと、ドン、と言う音がするはずなのに、ふわん、とした感触が返ってきた。
……………え?
いやまておかしいおかしい、なにこれえっイヤイヤありえないからほんとまじ勘弁してうそうそありえな~い。きっとこれは夢なんだ、そうか、そうなんだ。
と思いながら恐る恐る目を開けると
「ちょっと! 本当に大丈夫なの!?」
シーツの上で“母親”と書かれたスマホが、焦ったような声を上げていた。
「…これって、夢だよね?」
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