【三題噺】目覚まし

カゲトモ

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「ん…」

 意識が浮上すると、真っ白な世界にぼんやりとした灰色の模様が見えた気がした。頭の隅に、リリリリ、と何かが鳴っている。

 いや、何かじゃない。オレのスマホだ。

「んん~」

 まだ目蓋も開けられないまま、もぞもぞと無意識に近い仕草で布団から腕を出す。

 あぁ寒い。もう四月なのに。

 そんなことをモノクロの世界で思いながら、それもまた無意識に近い仕草でスマホの画面をタップした。おぼつかない指使いだったが、どうにかアラームは止まった。

 もう少し、このまま目蓋を閉じたままでもいいだろう。

 いつもの様にうつ伏せの状態で頭を枕に擦り付けながら欠伸を一つして、むにゃむにゃと言葉でもない言葉を吐きながら意識を手放す。

 だってまだ一回目のアラームだし、一応早めに設定したアラームだし、もう少し眠ってたって平気だし…

 

 リリリリリ…

 ふと気づくと、手元のスマホがブルブルと震えてリリリと鳴いていた。

 …あぁ、朝か。

 なんて考える暇もなく、ふわぁと布団の中で欠伸をした。そうして、いつもの仕草でスマホの画面に指を滑らせる。が、なかなかアラームが消えない。

 なんでだ。

 とは思いながらも、重い目蓋はいまだその扉を頑固に閉じたままだ。起きなくては、早く布団からでなくては、そんなことはもちろん分かっているし、実行しなくてはとも思っている。

 のに、いかんせんどうしてなのだ、意思とは相違して身体が拒否をするのだ。目蓋はまだ開きたくないと拒むのだ。あぁもう少し眠りたい。眠っていたい。もう少しだけ、あと少し、ほんの五分でいいから…。

アラームが止まると同時にまた、闇に落ちようとした。

「ちょっと」

 はずだった。

「アンタ起きてんの!?」

 良く知っている声が耳に入って来たのだ。安眠を妨害しやがって。

「る、さい」

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