第12話 雪隠
尿意のドライブ
最近、大道珠貴さんの『しょっぱいドライブ』という作品が芥川賞になったらしく、早速、文芸春秋を購入してきたが、私において、思い出に残るドライブといえば最近こんなことがあった。その名も『尿意のドライブ』である。
まず、私はその日、友人の家に午後から行くことになっており、昼飯の代わりにお菓子とブラックコーヒーを持っていた。そして、ガッツイタ。
そして、夕方ごろ、「今、暇?遊ばない?」などというメールがきた。これが男性ならば、たいていお断りするのだが、それは、女性であった。おはずかしながら、私は、恋愛経験というものがこれまで一回もない(理由としては、変なうわさや、私自身もそんな暇がなかったからであるが、1番は、田嶋陽子先生の「何もする事のない人が恋愛なんかする」という発言に共鳴を受けたからである)。
従がって、私はウキウキ気分でそれをOKし、ドライブに行く事となった。しかし、これが尿意との戦いの序章だったのである。
そして、電話で待ち合わせのところを決め、友人のアパートに自転車を止める事について、許可をもらい、待ち合わせのところでまっていた。
しかし、その頃は冬で、且つ、道が込んでいたため、長時間に渡って寒い中で待つ事となった。そして、やっとのこと彼女の車が到着すると、体はかなり冷えて、少し尿意があった。
そして、甲府市の山の頂上にある某所へ行くこととなり、どうでもいい話(その中には「彼女には彼氏がいる」という、強烈な話もあった)をしつつドライブをしていた。
しかし、5,10,15,20分とたつに従がって、昼間のブラックコーヒーと経験のしたことのない状況によって、私の膀胱は刻一刻と危機的状況になっていった。
そして、かなりやばくなった時、私は「次のコンビニで止めてくれる」と発した。相手も、私の表情を読み取ったらしく「トイレ?」といってきた。そして、彼女も「OK」といったが、数分もたたないうちに、彼女はこう言った。
「最後のコンビニ過ぎちゃった」
「えっ、エーーーーーーー!!!!!!!!」
「(山の)頂上にトイレあるから(我慢して)」
「ギョーエー!!」
ということで、私は山の頂上まで我慢するハメになってしまったのである。
読者の皆さんも経験があると思うが、トイレを我慢しているとき、衝撃を与えられると、チビリそうになってしまう。しかし、山を(車で)登るというはカーブが沢山あるということで・・・、一つ一つのカーブを曲がるたびに、チビリそうになってしまう。
「ウッヒャー」
しかし、ここでチビッテしまえば、私が彼女の恋愛対象から外れる以上に友人の関係もなくなり、大学内ではきっと「小便小僧」などというあだ名がつき、社会的名誉までが、無くなってしまう危機となることは明らかだった。
しかし、彼女もトイレに早く行かせたかっらしく、明らかにスピードをあげていた。従がって、カーブでの私の膀胱への衝撃はひどく、まさに生きた心地がしなかった。また、気をそらそうと話をしようとしても話すことによる横隔膜の衝撃が膀胱に伝わり、話すこともできない状況だった。
ゆえに、最後の手段として、「大自然の中での放尿というものをするしかない」という決意を固め、彼女に「途中の道で止めてもらうかも」とも言った。
しかし、どうにか持ちこたえ、どうにか目的地に着いた。ただ、彼女の私の危機を感じ、山道でスピードを出したらしく、「エンジンが、焼けたかも・・・・・・」といっていた。しかし、そうした、多くの犠牲の中どうにか、トイレにたどり着きやっと平和を得たのである。
この時、私にもしも「なぜ山に登るのですか?」ということを質問してきたならば、私はこういうだろう。
「そこ(頂上)にトイレがあるからだ!!」と。
しかし、このとき彼女は相当私にていして失望したらしく、その後いくら連絡をとっても、連絡が取れない状況になっている。ただ、あの時、何も言わずにチビッテいたら、と考えると、ぞっとする。
このように、そんな私の『尿意のドライブ』は寂しく終わっていったのである。
ただ、全国の山の所有者と農林水産省に言いたい、「山にもっとトイレを!!!!」。
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