動き出す者たち

第141話 がんばれるか?勇者対策委員会

 イチゴに絡め取れ転がって行き・・・・、一件落着した頃、勇者は王国軍の司令官に歓迎を受けていた


「さすが勇者様、奇怪な魔物を召喚し魔物共を退けるとは」


「いいえ、アレはアレクシスさんの仲魔ですし、中に入って電撃放っていたのは真理さんですから」


 アレクシスはイチゴを撫でながら不敵に笑っている


「ほほ、良い艶になりましたね。次の収穫が楽しみです♪」


 一方、真理は・・・


「うげぇ・・・、ゴーレムの身体でも酔うのね…、うぶぶっ!」


「しっかりしてくださいマリー隊長。ほら、言われた薬草持って来ましたよ」


「さすがに隊長でも、魔術師が魔力切れると形無しですね、ははッ。う…、オレも倒れそうだ・・・」


 ・・・トーマスとアッシュに介抱されながら、物陰で吐き気に耐えていた。司令官はその二人を見て頭を抱えている


「ははは…左様ですか。元脱走兵と不完全な勇者の手柄、報告書にはどう書いたものか・・・」


 司令官に声を聞き逃した勇者は聞き返した


「なにか言いましたか?」


「いえ。ところで勇者様、この様な事態になりましたが移民受け入れの準備は出来てるかと、上からの催促が来ています」


「あれ? 就任式をやってからという話じゃなかったですか?」


「ええ、そうなのですが一部の貴族から予定を早めたいとの声が上がってまして」


「こまったな、銅剣の調整もまだなのに。イベントが早まるような事したっけ僕・・・」



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 一方その頃、とある屋敷に集まる貴族達の会合があった


「再度集まってくれたことに感謝する。それでは話し合おう、勇者をどうするかを!」


 反勇者派の貴族達による勇者対策会議が行われた


「いやはや、まさか初めの会合場所に勇者が現れるとは思いもよりませんでしたな」


「勇者のストイックな気性ゆえ、娯楽施設には立ち寄らぬだろうと予測しルビック卿のウィルソンカジノを会合場所に選んだが、まさか真っ先に現れるとは」


「どこからか情報が漏れていたのではないか? ルビック卿、勇者の様子から何か読み取れましたかな」


 ルビックは顎を抑え、記憶を辿りながら意見を述べた


「いえ…、その様な様子は見受けられませんでしたな。遊び慣れている様な事を言っていましたし、我々を目的にカジノに現れた可能性も低いかと」


「低いか・・・。我々の存在を知って威圧の為に来た可能性は」


「それがどうとも判断しかねる。ワザと目立つ振舞いをしているとも取れるが、顔を売るのが目的ならスロットや闘技場でなく、多少危険を冒してもカードなどプレイヤー同士が顔を合わせるゲームを選ぶはず・・・・」


「と言うと?」


「多少負けても他の者と親密になれば、その知った顔の客達を囲んでゲームをし身を守りつつ情報収集もできますがあえてしなかった。しかしあえて個人と親しい関係は作らず、後にスロットでの善戦の噂を利用し不特定多数から聞き出そうとしている可能性も・・・」


「考え過ぎではないですかな?」


 ルビックは頭を抱えた


「・・・私の感が言っているのです。ヤツはまた来る、そしてヤツは賭場を貪り尽し飽き果てるまで通い続けると」


「上手くいいカモに出来るチャンスではないか。それに旗色が悪い様なら出禁にしてしまえば・・・」


 他貴族の発言にルビックは強く反発した


「そんな事をすれば親勇者派に目をつけられましょう! それに我々が勇者の準備が整う前にと就任式を早める様に圧力をかけてしまった。ヤツが正式に領主となり貴族位についた事が世間に知られれば、その新参者をカモにした、出禁にしたなどと悪評が立ち私の地位が危うくなる!」


「事を急がせ勇者に失態を起こさせルように仕向け、その隙に事を起こす計画だったが、反ってルビック卿の首を絞める結果になってしまいましたか。これは失態、あはは」


 貴族の笑いにルビックは動揺した


「まさか私を捨て駒になさるきか!?」


「いやまさか、ルビック卿を見捨てる様な事はしませんぞ。我々は一蓮托生いちれんたくしょうですからな」


 ニヤニヤしている貴族の言葉に他の貴族が発言する


「ヘラヘラしていると足元をすくわれるぞ。最も攻めやすい者から一人づつ始末していくのは定石だ。明日は我が身かもしれん」


 しばらくの沈黙の後、貴族の1人が口を開いた


「周りの者か・・・、勇者と親しいと予想される人物の動向は?」


「今日だけで道具屋に2度もよっていた。あそこを見張れば勇者に関する情報が多く得られるでしょう」


「北門に近いゆえあまり派手に動けばゴードン家の者を通じて勇者に知らされる危険もある、やっかいな」


「他に武器屋にもよっていた様なのですが・・・」


「おお、勇者の武器関連の情報を掴めるのは良いではないか!さっそく監視を・・・」


「いえ、勇者が顔を出した後に警戒を強めまして、常に武装しつつ仕事をしている程でうかつには・・・」


「くッ、すでに対処をしていると」


「しかもだ、くだんの道具屋の主人が勇者が武器屋に入店した後にタイミングをズラす様に立ち寄り直ぐに出てきたのを確認している」


「道具屋もグルか! おのれ、とぼけた様で油断ならぬやつよ!」


「カジノを出た後、北門のジェフリー・ゴードンと食事をしていたそうです」


「北門の警備責任者と? 何かの相談か?」


「私が放った追跡者の話によれば食文化の違いについて雑談していただけと。ただ・・・」


「ただ?」


「勇者のヤツめ見張られていると感づいたのか、適当な怪しい人物に話し掛けナイフで刺そうとしたとか。幸い見当違いの人物を攻撃しましたが、私の部下は危険を察しその場から離れた為、それ以降の情報はありません」


「妙に感が良い、それでいて容赦がない。勇者め、邪魔者は誰であろうと始末するつもりか!」


 皆が険しい顔で話している中、貴族の1人が言い難そうにしながらも割り込んだ


「しかし…、勇者はなぜジェフリー氏と食事をしていたのでしょうな・・・」


「それは世話になった人物だからだろう、どこに不審な点がある?」


「いえ…実は、あの・・・」


「ええい! ハッキリもうせ鬱陶しい!」


「では…。ジョージ王様が勇者にただならぬ好意をお持ちの様で・・・、ハッキリもうしますと男色家なのではないかとの噂があるのです」


「「は?」」


 一同は静まり返ってしまった

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