第25話 さあ、そのまま王の元まで行くのです By女神

 街に潜んでいた魔物ドッペルを捕獲し、城に向かった勇者達。勇者はは城の入口を警備している兵士に話しかけた


「すみません兵士さん、アマンダさんに会いたいのですが」


「勇者様と例のゴーレムですね連絡は受けています。お待ちしてました、会議室にてジョージ王様とメイド隊一同と共にアマンダ様もお待ちです。ところでその大きな荷物は?」


「ああこれですか」


 勇者はドッペルを入れていた大きな袋を開けた。中見て兵士は一気に警戒した


「ま、魔物!?これは一体…」


 勇者は困った顔をして言った


「元は普通の街の人だったのですが御不幸がありまして・・・蘇生しようとしたらこんな状態に・・・」


 それを聞くと兵士は真理の方を見て叫んだ


「キサマの仕業か異端の勇者め!」


 槍を持った兵士達が出てきて真理を取り囲む。真理は弁解する


「待って!コレについては100%そっちの勇者の責任なんだけど!」


 勇者は頭をかいて気まずそうに認めた


「はい、お恥ずかしながら。ですからアマンダさんに何とかしてもらおうかと」


「そうでしたか、これは失礼。流石に魔物を通すわけにはいかないので、その方には地下牢に入ってもらいます。アマンダ様と相談されてから処遇を決めると言う事で」


「はい。ドッペルさんの事よろしくお願いします」


「はっ、責任をもって預からせていただきます」


 槍を持った兵士たちは槍を下げ、持ち場に残った者を省いて帰って行く。ドッペルは特殊な装備の兵士に運ばれて行った


「では勇者様こちらへ、会議室の前までご案内します」


「はい」


 会議室に向かいながら勇者は真理に小声で話しかけた


「真理さん随分警戒されてましたけど何やったんです」


「アンタと違って翻訳スキルなんて持ってなかったから色々大変だったのよ」


「色々って?」


「言葉覚える為に身振り手振りで人に話しかけてみたり、ある程度話せるようになってからは工房から本を持ち出して読み書きを教わる為に本を持ち出したんだけど…」


「自力で言葉覚憶えたんですか!?でも工房の本って・・・魔導書の類じゃ」


「そ、基本声出して読んじゃヤバイやつ。何にも知らなかったからねあの頃は」


 勇者は”言葉もろくに通じずに、そんな危険物を軽々と曝しまわってたら危険人物と思われるだろうなぁ”と納得した


「大変でだったんですね。ちなみに真理さんってレベルいくつです?」


「レベルって?」


「この世界だと誰でも神の祝福が得られちゃうみたいですけど、経験値的な物が。急に能力が上がった様な感じがしたりしませんでしたか?」


「あー、何かやると不思議な力が溜まっていく感じはあるわね。でも急に上がったりはしないわよ、上げたいモノをイメージして力が足りてればそれが上がる感じ。レベルをいくつ上げたかなんて憶えてないわ」


「憶えてないって自然に精神に直接記録されるものじゃ・・・まさか経験値を直接ステータスアップに降れるって事!?自分の好きなように!?」


「あーそんな感じかしらね。アンタは違うの?」


「経験値がある程度溜まると一気に能力が上がります、その時にたまにスキルや魔法を覚えたりします。ちなみに今僕はレベル9です。召喚される時に女神様に説明されませんでしたか?」


 真理は何が可笑しいのか口を押えてクスッと笑った


「クスッ、ゲームみたいね。あたし会った事もないわよ女神なんて」


「無いんですか!?」


「召喚方法が違うせいかしらね。もしかしたらあたしは密入国してる様な物なのかも、さっき私の事を兵士が異端の勇者とか言ってたし」


「僕もそっちの方が良かったなぁ自分で好きなように強くなれるって」


「言葉に困らなければ…ねっ!」


「ピシ」


 真理はムスっとした表情で勇者にデコピンをした。勇者は笑って返した


「ははは、そうですね。でもなんで僕を実験台にしようと思ったんです?」


「一度魔法を覚えちゃうと楽しくて止まらなくなっちゃって…ふーふふふ。試したい事がありすぎて困るわぁ」


「そうですか・・・知力の上げ過ぎは良くないみたいですよ、精神が知力に追いつかなくなっちゃうみたいで」


「あら、そうだったの。気を付けるわ」


 初めはこの世界で必死に生きようとしていた真理も今は本物の危険人物になった様だ。そんな事を考えていると案内をしていた兵士が立ち止まった。目的地に着いたようだ


「どうぞ中へ」


 真理は挨拶をするように自然に笑顔で兵士にこう言った


「案内ご苦労だクソ野郎」


 勇者は真理の言葉に慌てた


「ちょっと!」


「勇者様どうしたのですか?」


 兵士は急に慌てた勇者を不思議そうに見ている。その様子を見て真理は笑った


「ふふふ、案内ご苦労様って言ったの」


「はっ、労いの言葉ありがとうございます。自分は持ち場に戻ります」


 兵士は敬礼し帰って行った


「ほら、何ボケっとしてるのゆうと、中に入るわよ」


「もしかして真理さん、さっきまで日本語で喋ってたんですか?」


「あら、気づかなかった?何でも翻訳されちゃうのも困りものね」


 真理は会議室の扉を開けた

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