第16話 女神だってたまには仕事しますよ?

 魔物達のと激闘の末、倒れてしまった勇者は


「起きなさい、起きなさい勇者よ」


「うう…」


 女神は勇者に語りかけたが、勇者は寝苦しそうにしていて中々目覚めない


「はぁ、勇者よ死んでしまうとは情けない」


「なんだってぇー!」


 勇者は飛び起きた、そこはいつもの女神の居る空間だった


「起きましたか勇者よ、もちろん死んだって言ったのは嘘ですからね」


「脅かさないでください!倒れてから最後にセーブした場所までの記憶が走馬灯のように逆行していきましたよ!」


 女神は涼しい顔で勇者を見つめている


「勇者よ、死んだら終わりとは言いましたが、セーブした場所からやり直せるとは言ってませんよ?何ですか、あの復活する呪文みたいなのをノートに書いたりして」


「そういう問題じゃありません、気分の問題です」


 勇者は当たり前のように言い放った、女神は表情を崩さない、もう慣れたようだ


「まあ、実際に頑張るのは勇者ですから私は構いませんけど?無茶して本当に死なないでくださいね。まだ3日しかたってないじゃないですか。それとレベルアップし過ぎです、知力が上がりにくい勇者ならあまり関係ないでしょうけど・・・」


「レベルアップし過ぎるとどうなるんです?」


 女神は思わせぶりな表情をした後


「これは知力の上がり易い魔導士の話なのですが、レベルアップで急激に上がった知力に精神が付いて行けずに発狂した者がおりまして」


 女神は”てへ”と笑った


「めちゃくちゃ危険じゃないですかそれ!何が神の祝福レベルアップですか!?」


「試練を乗り越えた対価とは言え、今まで持っていなかった力が手に入ってしまいますからね。宝くじで大金が手に入ってしまったがために身を亡ぼす人間が居るのと一緒ですよ」


「先に言ってくださいよそれ!」


「正直ただのオタクがここまでやるとは思わなかったので。勇者よ回復魔法を覚えたようですが、これを使えばもっと無理できると思ってませんか?」


「うっ、思いました」


「あなたが居た世界とは違った能力が使えるとは言えあまり無茶しないでくださいね」


「はい」


 勇者は大人しくうなずいた


「まあ、そんな事はどうでもいいのです勇者よ、先ほどの話と繋がるのですが少々まずい事に・・・」


「ビリィ…ビィ…」


 勇者の身体に衝撃が走るような感覚がした


「うっ何なんですかコレ?」


 女神は何やら気まずそうに”ああ、やっちゃったなぁ”って顔をしている


「あちゃぁ、もう来ちゃいましたか」


「来たって何がです?」


 女神は腕を組んで諦めた表情をした


「どうやら誰かが勇者の身体を運び出そうとしているようですねぇ」


「運び出すって今僕さらわれてるんですか!?」


「ええ、本来なら彼方が自分の身を守れるようになってから導くつもりでしたが。勇者よ目だち過ぎましたね、こんなに早く見つかってしまうとは」


 勇者の身体に衝撃がノイズのように走っている


「ビィ…ビィ…」


「こんな所に居る場合じゃない!頭ぶん殴ってでも目覚めないと」


 勇者は頭を殴ろうとしたが・・・殴れなかった


「勇者よ今の貴方はただの精神体、殴る腕も無ければ殴られる頭もありません」


「じゃあ、どうすればいいんですか!?」


「手負いの勇者では今起きて彼女と戦っても逃げれる見込みはありませんし、大人しくしててください。何とかなりますよ、きっと」


「きっとって・・・・」


 女神は勇者から目をそらした


「それでは勇者よ、もう手遅れな様なので私は帰りますねー」


「女神さま!?」


「それではお元気で、しっかりやるのですよ勇者達」


 女神は天高く昇って行き見えなくなっていく。勇者の意識は闇の中に消えて行った


「ふ~ふふ~ふふふん♪」


「う、うう」


 誰かの鼻歌が聞こえ勇者は目が覚めた


「あ、起きたわね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る