第10話 勇者の冒険はこれからだ!
勇者は壺を壊そうとした咎によりシンシアに怒られていた
「それに勇者様、貴方にとって壺や樽がどのような存在ののか分かりませんが。個人の資産または公共の物を壊したり漁ったりしてはダメですからね!」
「ああ、やっぱりだめですか」
「やっぱりって、駄目と分かっていて何故やったんです」
「勇者だからです」
「貴方の世界の勇者って一体……、とにかくそんな事をしたら衛兵に捕まりますから、やらないように悔い改めてください!」
「悔い改める・・・、あ、そうだ忘れるところだった」
場所は変わってアジトに帰ろうとしていた魔物は
「畜生、人間に化けるのも一苦労だぜ・・・」
アジトにしている家のご近所さん達に捕まり教会に来ていた
「ほれ、今日はちゃんとお祈りするんだよ。いつも軽くすまして帰っちまうんだから」
「こういう場所は苦手なんだよ婆さん」
”あんまり長居すると身体が焼けちまうんだよ”と言うわけにもいかず、魔物は我慢して人間のフリをするべくご近所付き合いをしている
「そう言いなさんな、こうして毎日祈りを捧げていれば、何時か困った時に神様が助けて下さるよ」
魔物は邪悪な微笑みを浮かべ”へっ、その前にオレに呪われちゃあ意味ねぇだろうに”などと思っていると教会の扉が開き、見知った連中が入って来た
「たのもー、お祈りをしたいのですが」
「げっ、勇者!?」
驚いた魔物を心配してお婆さんが声をかけてきた
「どうしたんだい?」
「い、いや何でもな・・・」
魔物は不意に誰かがのぞき込んでる気配を感じ、振り向くとそこにメイドが居た
「おや、貴方は」
「ひぃ!」
「先ほどは連れが失礼しました、今後あのような事が無いようちゃんと躾けますので」
メイドは魔物に向かって頭を下げ謝った
「いえホント、気にしないでくだせえメイドさんハハハ」
”どうやらオレを追ってきたわけではないらしい”と魔物は安心した。神父は入って来た勇者に話しかけている
「見ない顔ですね、旅の方ですか?」
「ええ、昨日来たばかりです。教会に来るのは初めてなのですが、どうやって祈ればいいのでしょう?」
「では、祭壇の前まで近づいて正座し手を組んでください」
「皆さんのマネをすればいいんですね?」
「はいそうです。おお、神よ新たな信者に祝福を」
勇者は魔物の隣に座った
”なんでオレの隣に!?出来るだけ祭壇から離れた所を選んだからか?”と魔物は動揺していると追い打ちをかける様に
「私も祈りましょう。この先苦労しそうですからね」
メイドも魔物の隣に座った
魔物は”挟まれた!?なんでだよ!勇者の隣行けよおめぇは!仲悪いのかてめぇらは!!”とツッコミを入れようとしたが耐えた
「させと、今日はもう帰ろうかねぇ」
「じゃあ、神父さんまた明日」
「ええ、また明日。皆さんに神の祝福がありますように」
ご近所さん達は帰ろうとしているが、魔物は怪しまれないよう祈るのに必死で気がつかない
「今日は随分必死に祈ってるねぇ。身体から湯気が出てるよ」
「きっと何かあったんだろう。邪魔をしない様に静かに帰ろうや」
「そうだね、あの人がこんなになってるのは珍しいからね」
魔物は教会に取り残された。勇者は何を思ったのか神父に妙な質問をした
「すみません神父様、探検の書はないんですか?」
「探検の書?聖書ならありますが」
「もしかして活動記録をつける日記の様な物でしょうか?丁度新しいものがありますので、よろしければこちらの手帳をお使いください」
メイドは万年筆の入った手帳を勇者に渡した
「ありがとうございます。何でももっているんですねシンシアさん」
”活動記録だと!好都合じゃねぇか、耐えたかいが有ったぜ。一体どんな事を書いてるんだ?”と魔物は勇者の探検の書を覗いた。そこには
あくうぬし ぼらけとほるく
みあるやわ とまと
と、書いてあった
それを見た魔物は”何の呪文だ!?ていうか暗号かコレ??”と混乱している
「ふう、探検の書も書いたし行きましょうかシンシアさん」
「教会で書く必要があったんですか勇者様?」
「これはそういうものなんです」
勇者達は教会を去った
「たっ助かった……神よ、あのモノから解放してくださったことを感謝します」
魔物は身体から煙を出し涙を流しながら心からの祈りを捧げた。それを見た神父は
「なんて美しい信仰心に満ちた祈りなんだ。これほどの物を見たのは何時かの聖戦いらいか・・・・・」
魔物は神の愛により20のダメージを受けた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます