認められない恋心

穏雷

第1話 間違い

俺、西峰 光は今日入学する予定だった比奈宮学園の前でしょげていた。

予定だったっておかしいと思うけど…本当おかしいよな。

自分でもおかしいって思う。

まさか自分の親が忘れっぽくて天然だとしてもこれはマジで有り得ねぇよ…。


事の発端はさっき。


「憧れの比奈宮学園にやっと…やっと入学だ!」

ワクワクしながら校門を潜ろうと足を上げた瞬間。

~電話だよー?早く取れよー?~

兄貴が勝手に設定した着信音が流れてきて俺は止まった。

「もしもし?」

『あ、光?今どこにいるの?』

電話の相手は母さんでいつもより声が切羽してた。

「え、比奈宮学園前だけど?」

『やっぱりいるわよねー?』

やっぱりってそりゃいるだろ。

苦笑しつつなに?って問いかけると母さんはケラケラ笑いながら言った。

『ごめんね〜!私の手違いで間違ったのよ〜』

もう1度言おう。母さんはケラケラ笑いながら言ったのだ。

『光〜?怒らないでね〜?』

入学直前に違う学校って言われて怒らない奴がいるのか?

いるならその顔を拝んでみたい。

俺は無言で電話を切ってしゃがみこんだ。

「俺…どうしたらいいんだよ?」

その時また電話が掛かってきた。

~電話だよー?早く取れよー?~

「なんだよ?」

舌打ちを打ちながら電話を取った。

『光?なにキレてんだよ?w』

家族で1番面倒臭い兄貴だった。

「なに?切っていいか?」

『冗談だってw光がこれから行く学校の事なんだけどさ?』

そうだった…俺学校の心配しねぇと!

「どこ!?」

『佐美川』

「は?今なんて言った…?」

俺の聞き間違いじゃなければ佐美川は男子校だ。

女子と話したいから共学にしたのに…男子校?

『佐美川!お前知らねぇの?w』

「知ってるに決まってんだろ!バカ兄貴!」

イライラするからまた切って俺は溜息をついた。


これがさっきの出来事。

たったの数十分で俺は気力をなくしていた。

ここから佐美川ってどれだけ掛かるんだよ。

本当めんどくせぇな。


「そこの君!まさか光くん?」

後ろから呼び掛けられて振り返ると知らないおじさんがいた。

「そうっすけど?なんすか?」

対応もめんどくさくて睨みながら答えた。

「そんな邪険にしなくていいのに…とりあえず車に乗って!話はそれからだ!

「……は?」

知らねぇ人の車に乗るって何考えてんだ?

このおっさん頭大丈夫かよ?

「早く!…あ、これ名刺!」

ほとんど無理矢理渡された名刺には『佐美川高校校長 崎原隼人』って書いてある。

「え、校長!?」

「うん!これでも校長だぞ?だから早く乗れ!遅れる!」

校長に見えねぇけど…遅刻は嫌だし乗るしかねぇか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

認められない恋心 穏雷 @819_love

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ