第22話 エルフの里で Ⅱ
「もう少し、ここにいたいんだろう? 食事の時も、エルフたちと楽しそうにおしゃべりしてたもんな。やっぱり、同じ種族の友達っていいもんだろうしね。俺自身、ゆっくり休みたいと思ってたから数泊しよう。別に、エルフィーのためってわけじゃないから、気にかけなくていいよ」
エルフィーの顔が、心配そうな表情から満面の笑みに変わる。
「嬉しい! 昇、ありがとう!」
エルフィーが抱きついてきた。
「おいおい、だからエルフィーのためじゃないってば」
「ふふっ。恥ずかしがっちゃって。いいわ。そういうことにしておいてあげる」
エルフィーは上機嫌で俺の胸板に頬ずりしてくる。こんなに嬉しそうなエルフィーを見るのは初めてかもな。俺もうれしくなり、俺たちは時間も忘れてお互いを優しく、それでいて強く、抱きしめあっていた。
「おっと、そろそろ戻ろうか。こんなところを3人に見られたら大変だぞ」
「えー? その時は見せつけてあげればいいじゃない」
「まあまあ、また機会があったら……ね」
「しょうがないわね。約束よ?」
「ああ、約束する」
なかなか俺から離れたがらないエルフィーを説得して、俺たちはこっそり寝床に戻った。
翌日の朝に、歓迎の演奏会が開かれた。バイオリンのような楽器を演奏するエルフたち。なんでも、倒れた木と、エルフの髪を魔法で数百本まとめた弦で作られた楽器で、ヴィオンというらしい。中央に立っているエルファさんが歌いだした。
その歌声はとてもきれいで心地よいものだった。音楽でこんなに感動したのは初めてだった。
「どうでしたか? 楽しんでいただけたでしょうか?」
「ええ、素晴らしい歌声と演奏でした。感動しました」
「喜んでいただけて私もうれしいです。もっと気軽な楽器もあるのですが、お聞きになりますか?」
「ええ、ぜひお聞かせください」
「分かりました。少々お待ちください」
そう言って、エルファさんはギターのような楽器を持ってきた。ガーチェという楽器らしい。ガーチェを巧みに演奏しながら、歌いだすエルファさん。これまた素晴らしく、プロの歌手以上じゃないかと思うほどだ。その後も、俺たちはエルフの演奏会を楽しんだ。
「昼食の後は、スポーツなどいかがでしょうか?」
森の幸をふんだんに使った昼食をみんなで食べているときに、エルファさんが話しかけてきた。
「どんなスポーツですか?」
詳しく聞くと、テイヌシュというスポーツで、ルールはほぼテニスと同じだった。木材と、エルフの髪から作られたガットを使ってラケットのようなものを作り、ボールは、土団子を形質変化魔法でよく弾むようにしたもので、色も黄緑で、まあテニスボールとほぼ同じものだ。
「こんな深い森の中で、スペースはあるんですか?」
「ええ。私も含め、エルフの中には木々と会話出来たり、木々を歩けるようにする魔法を使える者がいます。その魔法で、木々に別の場所に移動してもらってスペースを作っております」
なるほど、じゃあやってみるか。俺は、なんとなく友達同士で適当に遊んだ経験があるだけで、テニスはほぼ素人だ。4人の女子たちはみんな未経験だった。とりあえず、俺とそれぞれがシングルスで軽く遊んでみる。
「それじゃ、いくわよー。えいっ」
エルフィーは豪快に空振りをした。やはり運動は苦手なようだ。顔を真っ赤にする姿もかわいいな。俺と練習を繰り返し、多少はましな動きができるようになった。次は、シースの相手をする。
「いきます~。それ~」
シースがサーブをする時に、その爆乳がたゆんと揺れる。爆乳に見とれてボールに反応できなかった。
「ごめんごめん。今度は俺がサーブをするよ。それっ」
ちょっと強かったか? 俺の心配をよそに、シースは予想以上に機敏な動きで、ボールを打ち返してきた。ラリーが続く。
「なんだ、シース。こんなに運動神経が良かったんだね」
「えへへ~。ありがとうございます~。えい~」
俺たちは楽しくラリーを続けた。次はエルシドが相手だ。
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