救済
とある男がいた。
この男は、勉強はできない、仕事もできない、恋愛もできない、友人もできないと散々だった。
男には体力がなかった、他人の心を察することができなかった。それは生まれつきだった。その癖、誰かの役に立ちたいと願っている愚か者だった。
周りの人は男に言った。「あなたはあなたでいればいい。生きる権利は誰にでもある」と。
男はそんな言葉を聞くたびに内心クソ喰らえと毒づいた。優しい言葉をかける彼らが、その実、男を疎んじていることを、男はほかの誰よりも知っていた。
ある日、男の前にひとりの子供が現れた。
子供はその純真さで、はっきりと言葉にした。男が世界にいらない理由を、炎のごとき勢いで並べ立てた。
男は灼かれた。そして歓喜のあまり涙して子供に礼を言った。それから急いで家に帰ると用意していた縄で首を吊った。人生のなかで得た、唯一の救いだった──。
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