ドラゴンキラー

あびすけ

第1話 序





【王国ギルド情報】


【閲覧制限レベル10】


【閲覧条件】


【王族・貴族、五等級以上の魔術師・精霊使い、八闘級以上の戦士・剣士・傭兵・騎士・冒険者・狩人】


【ドラゴンキラーについて】


325年前の種族全面戦争時、人族の切り札として投入された対異種族殲滅用生体兵器群の総称。魔導術式により産み出された人造強化骨格、皮膚・筋肉・血管に刻まれた略式魔方陣、心臓に埋め込まれた半永久魔力生成炉。人間を遥かに凌駕する魔力と身体能力をもって戦場を蹂躙し、異種族を制圧・虐殺、さらには生態系の頂点に立つドラゴン族と対等に渡り合ったと言われる。故に種族全面戦争中期から戦場では彼等を【ドラゴンキラー】と讃え、祀り、崇めたとされる。


圧倒的な力を有する彼等ドラゴンキラーであったが、現ユリシール王国北東500キロ地点に位置するヌルドの森で行われたドラゴン族との総力戦において全滅。しかしドラゴン族側も壊滅的なダメージを被り、またひとりのドラゴンキラーがドラゴン族最強とうたわれた黒竜に致命傷を与える事に成功。これによりドラゴン族は撤退し、戦争は終局に向かっていく。


ドラゴンキラーは最重要ロストテクノロジーであり、その情報には金貨80000枚の値が付く。








【魔力保有量値・王国魔術学術院調べ】


【純粋な魔力値のみ。この表だけでは戦闘能力までは計れないが、参考にはなる。肉体・特殊能力などは考慮されていない】


【魔力保有量値表、その一部】


一般的な人間 魔力値 [2000]


一~四等級の魔術師・精霊使い 魔力値 [8000~10000]


五~八等級の魔術師・精霊使い 魔力値 [10000~60000]


一~七闘級の戦士・剣士・傭兵・騎士・冒険者・狩人 魔力値 [2000~6000]


八~十闘級の戦士・剣士・傭兵・騎士・冒険者・狩人 魔力値 [2000~15000]


エルフ族 魔力値 [7000]


ダークエルフ族 魔力値 [5000]


オーク族 魔力値 [600]


ドワーフ族 魔力値 [4000]


アンデット族 魔力値 [6000]


【閲覧制限レベル9】


吸血鬼・真祖 魔力値 [130000~210000]


リッチ 魔力値 [150000~250000]


人狼・長寿 魔力値 [110000~180000]


ワイバーン 魔力値 [170000~230000]


【閲覧制限レベル10】


【325年前の文献によると】


ドラゴン族 魔力値 [200000~500000]


対異種族殲滅用生体兵器ドラゴンキラー 魔力値 [250000~480000]








【奇跡的に発掘された325年前の魔術師の日記】


【その一部】


気がつくとわたしの町は燃えていた。靴も履かずに外に飛び出すと、夜だというのに空が赤く染まっている。わたしは走り出した。遠くの区画が燃えている。そこにはわたしの恋人ユリアの家がある。わたしはユリアの名前を叫びながら足り続けた。足の先に痛みが走り、転んだ。見ると爪が割れている。なんとか立ち上がったその時、頭上から一匹のドラゴンが


(損傷により読めない)


青年から立ち上る魔力が大気を焦がすのを感じた。わたしは絶句した。その魔力はドラゴンと同等、いやそれを凌駕していたのだ。高密度の魔力がわたしの間接を軋ませる。これほどの


(損傷により読めない)


ゴンの首が切り落とされる。青年は頭から血を浴び、鈍く光る剣を天に掲げる。わたしの目は青年に奪われる。青年は燃える空に向かって咆哮する。それは勝利の咆哮だ。わたしの胸も熱くなる。こんな人間がいるなんて。ドラゴンを殺す人間がいるなんて。わたしは


(損傷により読めない)








【ある冒険者とエルフ族との会話の一部】


【六闘級冒険者・リアン】


【エルフ族・長老】


リアン『もっとも恐ろしい種族となると、やはり吸血鬼ですか』


長老『確かに吸血鬼は恐ろしい。不老不死で肉体は強く闇魔法を巧みに操る。しかしアレより恐ろしい魔物はいる』


リアン『例えば?』


長老『人狼に会ったことはあるか?奴等は歳を重ねれば重ねるほど強力になる。200年生きた人狼は不死の肉体を得る。満月ならば真祖すら上回る力を発揮するじゃろう。あるいは三つ首の凶犬ケルベロス。常に餓え、黒い焔を吐き、眼に映る生物を殺し尽くす残虐な魔物じゃ。真祖といえど単騎で奴を退けるのはなかなか骨がおれるじゃろう』


リアン『そいつ等にはまだお目にかかった事がないですね。できればこれからも会いたくない』


長老『ほほっ、正直な人間じゃな』


リアン『長生きしたいんですよ』


長老『ならば冒険者などやめることじゃな』


リアン『適度なスリルは健康に欠かせません』


長老『全く、人間の考えることは昔から理解できんな。まあよい。恐ろしい魔物じゃったな。一番はやはりアレじゃな』


リアン『アレとは?』


長老『ドラゴンじゃよ。あれほど恐ろしい魔物はおらん。空を燃やし大地を破壊する。ドラゴンの通ったあとには何も残らん。血も、死体も、村も、町も、国も、等しく無に返す。奴等はこの世の邪悪その物じゃ』


リアン『ドラゴンですか。ワイバーンなら何度か見たことがありますが』


長老『本物のドラゴンにくらべれば、あんなものは羽根の生えた蜥蜴じゃよ。戦時中、私はドラゴン族の恐ろしさを嫌というほど味わった。何百という同胞が食われ、裂かれ、燃やされた』


リアン『戦時中、というと300年前の種族全面戦争ですか』


長老『そうじゃ。あの戦争を経験した人間はもういないんだろう?人族の寿命は百年かそこらじゃからな。当時の人族といえば、それは凄まじかったんだぞ。今とは比べ物にならん魔法技術を持っていてな・・・そう、そうじゃ、人族は恐ろしかった。特に奴等が』


リアン『奴等?』


長老『長ったらしい名前がついとっな。異種族殲滅・・・正式名称は思い出せん。ただ私らは恐怖と憎悪を込めて奴等をこう呼んどった。ドラゴンキラーと』


リアン『ドラゴンキラー?そんな人間たちがいたんですか?』


長老『【竜殺しの踏む土地は、血と殺戮の涙を流す】』


リアン『唄ですか?』


長老『戦時中に流行った唄じゃ。恐ろしい唄じゃよ』


【これ以上は閲覧できません】





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