プレゼントパニック
あの騒動から早1年、双子はすくすくと育ち、母である佳代さんの後ろをくっついて回るところがたまらなくかわいかった。わんこと猫も大人になり、元気な3歳児に負けないパワーを発揮している。日向でわんこのお腹に埋もれてお昼寝しているところは思わず写真に撮ってしまった。スマホの待ち受けは今これである。
あの時妊娠が発覚した時の子供も無事生まれている。女の子で千佳と名付けた。兄と姉はちーちゃんと舌足らずな声でかわいがっている。その様子を見て俺と佳代さんの頬は緩みっぱなしであることは言うまでもない。ポチがしゅたっと足元に現れた。なおーんと声をかけてくる。佳代さんはおむつをもって千佳のもとにすっ飛んでいった。相変わらず有能なベビーシッターである。おやつのカリカリを与えると、ゴロゴロ言いながら受け取り、満足げに尻尾を揺らしていた。
「クリスマスにはサンタさんがプレゼントをくれるんだよ」
「えー、そうなんだー」
「ゆーくん、いい子にしてないともらえないんだよ」
「僕いい子だよー」
「えー、けどこの前えり先生に怒られてたじゃない」
「だってあれは・・・」
「ゆう君? そのお話ママに聞かせてくれるかな?」
「え、いや、あの、え?僕何もしてないよー?」
加菜はそっぽを向いている。しらばっくれているだけなのだがやたらかわいい。で事情をきくと、いじめられてる子をかばったらしい。その時にちょびっとポカスカがあったので、お友達を叩いちゃいけませんと両成敗的に叱られたそうだ。
奥の部屋からうきゃーって声が聞こえてきた。そっと様子を見ると、ウルウルした目で佳代さんが悠太を抱きしめている。事情は正確に伝わって、感極まって抱きしめたようだ。思い切り。
「ママ、悠太が苦しそうだよ?」
「え? あ・・・思わず力がはいっちゃった・・・てへ?」
「ママの愛が苦しい・・・」
おいまて、どこでんなセリフを覚えてきた?
話を元に戻し、二人からプレゼントは何がほしいか?パパからサンタさんにお手紙出すからねと、紙に書かせた。ママは千佳ちゃんにご飯を上げている。ドアの外にはタマ(犬)がデーンと座っている。うちの父が入ろうとしてがっつり嚙みつかれたのはもう笑い話になっている。
子供たちを寝かしつけ、預かった手紙を開く。加菜のほうは、おとうと、と書かれていた。顔を見合わせると、頬を赤く染めている。いつまでたっても新妻である。そして、佳代さんが悠太の手紙を開いた瞬間、口から短い悲鳴が漏れた。そこにこう書かれていた。「あたらしいおかあさん」ちょっと取り乱している佳代さんを落ち着かせ、一緒にお風呂に入って今出てきた。弟が増えるかどうかはコウノトリさん次第である。
「私、あの子に嫌われてるのかな?」
「うん、それは絶対にない」
「だって、新しいお母さんって・・・さっきも目を回すまで抱きしめちゃったし」
「あー、けどなんか意味が違う気がするよ」
「うう、お母さんがんばる。もっといいお母さんになるから」
「まあ、あしたちょっと聞いてみるよ」
「うん、お願いね」
そしてそのまま眠りについた。さすがにちょっと動揺しているのか布団の中でむぎゅっとしがみついてきた。ちょっと寝るのが遅くなった。
次の日、冬には珍しく晴れ間がのぞき、悠太と散歩に出た。
「悠太、サンタさんからお手紙が来ててね。プレゼントのことでちょっと聞きたいことがあるんだって」
「へー、すごい! それで、何を聞いてきたの?」
「うん、新しいママって、どんなママがいいのかな?」
「うん、それはね・・・」
俺と悠太が帰ってきて、佳代さんはなんかそわそわしていた。悠太がただいまーって佳代さんにしがみついて甘えている。子供の可愛さにとろけそうな笑顔になっている。そんな嫁さんがかわいい。
夜、子供を寝かしつけて、なんか判決を聞くような緊張感で悠太の希望を聞いてきた。そして答えを教えるとぽかーんとしたあと、少し涙ぐんでいた。その答えとは…同じのもう一人だった。
「あのねー、ママが大変なんだよ。ちーちゃんのおせわして、ぽちとたまにご飯あげて、ぼくらをお風呂に入れて、そんでまたちーちゃんが泣いて。僕がお昼寝から起きたら、ままがちーちゃんの横でおねんねしてたの。そんで、もう一人ママがいたら、もっと楽になるのかなーって。そんで、僕ももっとママといれるのかなーって」
「そうか、悠太は優しいなあ。いいこだ」
ちょっと泣きそうになった。いい子に育ってるのは間違いなく佳代さんのおかげだ。
「けどね、ママが大変だから、僕もっとお手伝いするの。ちーちゃんのお世話もするの。加菜ちゃんと一緒にね」
そういってにぱっと笑った息子の笑顔につられ、俺も笑ってしまっていた。
その時の素直な思いをそのまま佳代さんに伝えた。ちょっと涙がにじんだ目じりと、幸せそうな笑顔と、子供たちの寝顔が家族の幸せの証だったのだ。
そして子供たちのプレゼントのリクエストの問題が解決していないことに気付き、二人そろって頭を抱えるのだった。
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