新居と子育てと
子供の名前は、男の子が悠太、女の子が加菜に決まった。今は新生児室ですやすや寝ている。かわいいなあ。検診でも何の異常はなく。元気な赤ちゃんですよと結果が出た瞬間佳代さんが泣き崩れた。最初の子供のことを思い出したのだろうか。あえて口に出す理由もなく、元気な子供を産んでくれてありがとう、と伝えるにとどめた。微笑んだ佳代さん御笑顔がとてもきれいだけど、はかなく見えたのは気のせいだと思いたい。
さて、母子ともに予後は順調で、年明けすぐに退院できた。不動産屋からもらってきたパンフレットと資料を見ながら新居の相談をする。
「んー、駅から近いとか病院が近いとかって便利なところは家賃高いねえ」
「そうだね。パートとかもしたいし」
「んー、できたら子供のそばにいてほしいなあ」
「けど学校とかいろいろ考えたらお金かかるよ」
「まあ、そうだね。いろいろ考えないとだ」
いろいろと頭を抱えていると、ポチ(猫)が寄ってきて膝の上でもふっと丸くなった。タマ(柴)はベビーベッドのそばから離れない。頼もしい長男だ。子供たちが泣いたりすると知らせに来てくれる。ありがとうというと笑顔でしっぽが高速でぶんぶん振る。何だろう、この癒しは。猫の毛並みも癒しを与えてくれる。ああ、幸せだなあ。と思っていると佳代さんもわんこをなでながらとろけそうな笑顔だった。
さて、とりあえず通勤圏内にペット可のファミリー向けマンションを見つけたのでそこに引っ越した。結婚式は佳代さんが再婚だからと乗り気ではなかったので、子供と一緒に写真を撮っておいた。
たまに実家から両親とお義父さんが遊びに来てくれて、犬猫と子供たちのテンションが上がる。俺の仕事も順調で、たまの残業や出張もあったが問題なく過ごしていった。そして1年が過ぎ、子供の誕生日。実家から両親ずがやってきて、大きなケーキで祝ってくれた。こんな時母にかなわないなとおもったエピソードが一つ。
「佳代ちゃん、おめでとう」
「え? 今日は子供たちの誕生日ですよ?」
「そうねー、1年前頑張って生んだんだよね。だから、1年間お母さんも頑張ったで賞」
「え、え、そんな・・・ありがとうございます」
「ほらほら、泣かないの。こんなかわいい孫たちを生んでくれたんですもの。わたしたちも幸せよ」
「はい、はい、ありがとうございます」
「あー、母さんや。先を越さないでくれるかな」
「さっさと渡さないあんたが悪い」
「むう、ママ、じゃない佳代さん。俺からも1年間ありがとうと、ママさん一周年記念で、これ」
「ありがとう、ありがとう・・・」
ふと見るとお義父さんももらい泣き気味だった。俺はこんな幸せな日々がずっと続けばいいと思っていた。
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