零時

橘偲

零時

「寝れ」


そうラベルされ『0:00』と表示された携帯が光っている。

一緒に流れるお気に入りの曲は、音が小さすぎてないも同じだった。

ただ、バイブレーションが鳴っている。


もうこんな時間か、と片手間にアラームを止めながら思う。

今、手にはコントローラーが握られていて目の前の画面には頭上に名前を浮かべたキャラクターたちが縦横無尽に駆け回っている。

一人だけ、ぼぅっと突っ立ったまま動かないでいるのが携帯の相手をしている自分だとよく分かる。


また明日も朝から働くのか、とか、もっと時間あればいいのに、とか、一生引きこもれる生活がいいな、とか、いかにも若者らしいことを考えつつ両手にコントローラーを握って画面に向かう。

遅くても2時には床につかねばならない、そう思いながらも止められずにいるのはなぜだろうか。


またパーティーを組んでダンジョンに進む。

キャラクターの後ろ姿は、彼自身の後ろ姿のようであった。

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