第19話 ~帰宅~
「え!?」
思いがけない人物がやってきた。
嘘だろ!
鈴蘭との話が終わったのか?
マズイ!
「あ、うん。これから入るところ」
「え? シャワーの音が聞えるけど?」
「そう? で、何か用事?」
「洗濯したタオルを入れようと思って。入っていい?」
「ま、待って」
まずはシャワーを止めないと!
私はちょっとだけ戸を開けた。
「わあ! 何ですか!?」
「シャワーを止めろ!」
私はなるべく小さい声で叫んだ。
ビリニュスは言われた通りにシャワーを止めた。
「入っていいよ」
私が許可を出すとお袋は数段積まれたタオルを持って入って来た。
「朱火ちゃん。鈴蘭ちゃんの事なんだけどね」
お袋がタオルを置きながら話し始めた。
「今度の顔合わせ会で決めるみたい」
あのお見合いみたいな会か。
「何だか複雑よね。祝ってあげたい気持ちはあるけど、まだ早いというか……」
「お袋もそう思う?」
「ええ。19で結婚した私でも、決めたりするのはまだ早いと思うわ」
「だろうね。せめてもう数年待ってもいいと思う」
「あれ? 朱火ちゃんは賛成していたんじゃないの?」
「反対の気持ちが無い訳では無い」
私が鈴蘭の婚約を賛成か反対かを決めるのは鈴蘭の隠し事を知った後だ。
「婚約が成立しても、しなくとも私達は影ながら応援していましょう」
「ああ」
これは本心だ。
どんな道であれ、鈴蘭には幸せになって欲しい。
「そろそろお姉様と鈴蘭ちゃんがお帰りになるわ。お見送りしましょう」
「もう帰るの?」
「ええ。話せて良かった、とお姉様がおっしゃっていたわ。お二人共満足していらっしゃったわ」
「そりゃあ良かった」
ストレス解消みたいになったのかも。紫陽花さん。
「玄関へ行きましょう」
お袋は先に行った。
「えーっと。僕はここでシャワー浴びていていいですか?」
風呂場からビリニュスが聞いてきた。
そういえばちょっと開けっ放しだった。
「ああ、そうしてて」
「あ! そういえばこの後の僕の服!」
「あ!」
しまった!
そこまで考えていなかった。
「私の部屋にジャージがあるからそれに着替えよう」
「ありがとうございます」
「じゃ、鈴蘭と紫陽花さんを見送ってくる」
私は走って玄関に向かった。
鈴蘭と紫陽花さんは靴を履いて玄関にいた。
「じゃあね。撫子、朱火」
「お姉様も鈴蘭ちゃんもお気を付けて」
「はい、叔母様。お姉様も体にお気を付けて」
「ああ。お前もな、鈴蘭」
2人は玄関の扉を開けて帰って行った。
扉が閉まったのを確認すると、私は自分の部屋に走ってジャージを取りに向かった。
セットで洗面所に持って行き、扉を閉めてビリニュスに伝えた。
「ビリニュス、ジャージ置いてくよ。着替え終わったら私の部屋に来て。話したい事がある」
「わかりました」
私は洗面台に置いてあった執事服一式を持って二階に上がった。
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