第17話 ~汚いビリニュス~
「お前今までどこで何してた?」
私は全身ゴミだらけになったビリニュスを見ながら聞いた。
玄関の近くでビリニュスを探していると、後ろから私を呼ぶ声がしたので振り返って見るとビリニュスが何かを持ちながら走って来た。
全身ゴミだらけだとわかったのはすぐそばに来てからだった。
「僕も最初はリビングまで付いて行ったのですが、従姉妹さんと、そのお母様が深刻そうな顔をしていたので僕は遠慮して外に出たんです」
「お前、普通の人間には見えないんじゃなかったか?」
「朱火さんには見えますから」
そうか。
「なので、その辺を散歩していたら山積みになっている雑誌を見つけました。しかも紐で十字に縛っている」
ゴミ捨て場かよ。まあ近くにあるからな。
「そこで一番上にあった雑誌の表紙を見て気になったので抜き取ろうとしたのです」
コイツが気になった雑誌って何だ? そっちも気になる。
「そしたら抜けなくて。そうしているうちに収集車が来て回収されたんです」
「それを取り返そうと収集車に乗り込んでゴミだらけになったのか?」
「はい」
「馬鹿かお前は」
そうとしか言いようが無かった。
「いくらなんでも収集車の中に飛び込むような奴がいるか!」
「僕は普通の人には見えませんから。僕が雑誌のところにいても誰もいないと思い、そのまま収集車に積まれましたから。それで仕方なく収集車に飛び込んだんです」
見えないっていうのは不便なところもあるんだな。
「ゴミだらけの事情はわかった。ところで手に持っている物は何だ?」
「取り出した雑誌です」
取り出せたのかよ!
ビリニュスは右手に持っていた雑誌を私に見せた。
『月刊金融の裏』。
「……お前本当に私達が話していた事聞いていないよな?」
「え? 聞いていませんよ」
「じゃあなんでこんな雑誌読もうと思ったんだよ?」
「ツバキ様が『人間は金が絡むと変わる』とおっしゃっていた事を思い出しまして。それで僕も人間とお金について調べようと思ってこの雑誌を読もうと思ったのです」
またツバキか。
まぁ今回のツバキの言葉は納得がいく。
「まだ読んでいないので今読んでいいですか?」
「その前に体と服を洗ったらどうだ」
「……そうですね」
ビリニュスは自分の全身を見て答えた。見なくてもわかるだろ。
私とビリニュスは家に戻り、真っ直ぐ洗面所に行った。
「お前は風呂場で脱いで服を私に渡して。洗うから」
「すみません。ありがとうございます」
ビリニュスは風呂場に入るとすぐに戸を閉めた。陰になっているが、脱ぎ始めた様子が見えた。
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