第9話

「分かんないよ〜!」


「おい! 諦めんなよ! 一緒の大学行くってお前が言ったんだろ?」


「はいはい、その通りです」


アタシは図書室に、こうたに勉強を教えてもらっていた。


昔ほどガリ勉ではなくなったみたいだが、今も勉強バカでもいるらしい。


「てか、高二の冬休みから受験勉強って早くない?」


「お前が学力低いからだよ」


「言ったな〜!」


なんて、アタシたちは、今でも雑談しながら、笑い合う仲だ。


でも、昔と変わったことは、二つある。


一つは、もう時間旅行タイムリープしなくなったこと。かおるさんが成仏してしまったからかもしれない。


そして、もう一つは……。


「おーおー、お熱いですね、お二人さん!」


「あゆみ、また冷やかしに来たの?」


「幸せがあったら、潰したい性格なんですよ〜」


「そんな害虫は、アタシが駆除してあげる」


「怖い怖い。それにしても、本当にお似合いのカップルだね」


アタシとこうたは、顔を合わせてから、答えた。


「「ありがとう!」」


「キーッ! その謙遜のない答えがムカつく〜!」


そう、アタシたちは付き合うことになったのだ。あのときの一連の出来事を彼に伝え、受け入れてくれたと思ったら、いきなり告白されたのだ。


あのときは、驚いたが、そのおかげで今の幸せがある。


アタシは、こうたを見つめる。


その笑顔を、優しい心を、全てを守ってあげたい。


なんて、母性全開のことを考えてしまう。


でも、これがこの心臓を受け取ったときの、彼女からの『お願い』であり、『約束』であるのだ。


「こうた……」


アタシは彼の名前を呼んだ。


彼がアタシの目を見る。


その目をじっと見つめる。


アタシの、かおるさんの心臓が激しく踊りだす。


そして、アタシは言った。


「好きだよ」


アタシはあなたとの約束を絶対に守ります。だから、優しく見守っていてください。


アタシは『心』の中で、もう一度彼女に誓うのであった。



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心臓は君への伝言 ユウキアイキ @yukiaiki

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