心臓は君への伝言

ユウキアイキ

第1話

「アタシ死ぬんだ」


そう思った。短い人生だった。憧れの高校生になることなく死ぬんだ。


そう悲観的感情になりながら、毎日夜にこの世の未練を考えながら、病室で泣いていた。


すると、ある日、『命のバトン』が渡された。それでアタシは生きることを許された。


でも、そのバトンを渡してくれた彼女は、アタシにお願いを言った。


しかし、その内容は、いつか忘れ去り、アタシは念願の高校生になっていた。


▷▷▷▷


「それでは転校生を紹介する」


担任の男性教師の隣には、髪をワックスで整えた鋭い目つきの男子がいた。


多感な高校二年生らしく、少し色気づいている、というのがアタシの彼への第一印象だ。


彼は姿勢を正して、発言した。


「今日からこの高校に転校しました。篠田こうたです。よろしくお願いします」


社交辞令の拍手が湧き、それらが消えると担任は言った。


「じゃあ、君は、かなえ……あのガサツそうな女生徒の隣に座ってくれ」


クラスに笑いが起きる。


おいおい、アタシを笑いの材料にしないでくれよ。


アタシの席は、窓側の一番後ろ。勉強しないやつにとってはこれほどの特等席はない!


その隣に、こうたは座った。


すると、アタシの前にいる女子が、こうたに話しかける。


「ねぇねぇ、私、あゆみっていうんだけど……昨日テレビ見た? 」


「え?」


因果関係が成り立っていない文に、彼は戸惑う。


「すごいよね人間って! 死んでも生き返った人もいるし、脳以外の臓器で記憶が保存できるらしいし、あと、恋人同士だと心臓の鼓動がシンクロするんだって! すごくてすごくてすごくない!?」


自己紹介からの謎の質問攻めに、彼は「あ、あぁ」と驚いた顔で対応する。


彼女、あゆみはアタシの友達であり、中学校が女子校だったせいか、一方的に、意味の分からない話をする癖がある。


女子であるアタシならまだしも、男子で、彼女のレベルについて来れる者はいないだろう……。


さて、救済してあげましょうか。


「あゆみ、逆ナンはそれくらいにしなさい」


「逆ナンじゃないよ〜」


あゆみはいたずらっ子ぽく言う。


とりあえず、救出完了。


男子は目立った外傷はなし、と。


そうやって、男子の顔を見ると、アタシの中で何かが引っかかった。


席が遠いせいでよく見えなかったが、今こうして近距離で見たら、どこかで見覚えがあるような気がしてきた……。


そして、アタシはこうたに視線を向けジーッと見つめる。



「どうかした?」


また彼に苦い顔をさせてしまった。


「あのさ……どっかで会ったことある?」


初対面のような気もするが、これは見覚えのある顔だ。どこかで会ったと思う。


しかし、彼は「いや、初対面だよ」と答えた。気のせいかな?


「おい、そこ静かに」


担任の叱咤(しった)で、アタシたちは話すのをやめる。


まあ、気のせいかな。


▷▷▷▷


場目変わって、その夜。アタシは自室のベッドの上で眠りをつこうとしていた。


やはり何か引っかかる。この鼓動は……もしかして恋……のわけないない。


さて寝よう。アタシは目を瞑(つむ)った。


▷▷▷▷


場所は神社の境内。屋台がいくつか立ち並んでのを見ると、今日は祭りなのだろう……。


てか、ここどこだよ!


さっき、アタシは、ベッドの上にいたじゃん!


そう戸惑ってると、後ろから男の子の泣き声が聞こえる。


振り向くと、小さい男の子が膝を抱えて泣いていた。


今は子どもをあやす暇なんてないんだけど……。


しかし、男の子が鳴き止む気配はない。


…………しょうがないな。


アタシは近づいて話しかける。


男の子は顔を上げた……。


アタシは驚愕する。


なぜなら、その男の子は、幼いこうたであったのだ。






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