クトゥルフ系アーティファクト蒐集日記

@cthulhu_mania

第1話 私はいかにしてアーティファクト蒐集にハマったか

 クトゥルフ神話が静かなブームである。何をもって静かなブームと言えるのかは置いといて、とにかく静かなブームである。

 私の趣味はクトゥルフ神話に関連するアーティファクト(人工物・工芸品)の蒐集である。と言っても、本当に魔力が込められた、世界の運命を左右するようなものを集めているわけではない。ほとんどが、所謂ファンメイドというものだ。すなわち、そういうものを作るのが好きな人達の作品を集めているのである。だからアーティファクトの材料も黄金や伝説の鉱物などではなく、大抵はレジン(樹脂)である。ただ、上手い人が作ると、本物の黄金やブロンズ、未知の金属みたいに見える。そういったものを、ちまちまと買い集めているわけである。価格も安いものは2~3千円、高くても1万円くらいで買える。趣味のコレクションとしては、妥当な金額だと思う。何をもって妥当などと言っているのかについては言及しない。

 全ての作品を調べたわけではないが、日本人の造形作家の方が作るクトゥルフ像は「リアル」か「ゆるキャラ」か「萌え」が多い気がする。無論、それを否定する気はさらさらないし、むしろもっと盛り上がってほしいと思っている。それに対し、海外の造形作家の方が作られているクトゥルフ像は、ちょっと独特なものが多い。上手く表現できないのだが、何というか「もしクトゥルフが本当に存在するとして、古代人が信仰の対象として偶像とか作ったら、こんな感じになるよね」みたいなものを作っている。一度、私が主催したイベントで、そのクトゥルフ像を展示してみたところ、お客さんの一人が「これ本物ですか?」と質問してきたことがある。もし本物なら、クトゥルフは昔、本当に信仰されていたことになる。そんなわけはない。クトゥルフは小説の中に出てくる怪物(正確に言うと怪物ではないが、その辺を話し始めると長くなるので割愛する)であり、空想の産物なのだ。だが、その像の存在により、クトゥルフの存在にリアリティがうまれたのである。

 話が脱線しそうなので、一度元に戻そう。今回のテーマは、なぜ私がクトゥルフ像などのアーティファクトを集めることにハマったかである。

 私はもともとクトゥルフ神話が好きで、小説などを集めていた。集め始めたのは30年以上前からである。無論クトゥルフの存在自体を信じていたわけではないが、そういったものが本当にいたら面白いだろうなぁと、漠然と冒涜的なことを考えていた。そして数年前、ネットで色々と検索していると、海外の作家達のクトゥルフ神話関係の作品を見つけることができた。それは、私にとっては衝撃的な作品であった。実際「クトゥルフって実は昔、本当に信仰されていたんじゃないの?」などと一瞬考えてしまった。探してみると実に色々な「作品」が出てくる。古代人が崇拝した像、発掘の記録、クトゥルフ神話的事件に関わり精神病院に送られた人のカルテ、奇妙な新聞記事、クトゥルフに関する魔導書・・・、この人達クトゥルフを本当に居たことにしてしまおうと画策するクトゥルフ信者なんじゃないのかと思ってしまった。

 そしてまぁ、その世界の魅力に取り憑かれてしまった私は、早速個人輸入を始めることになる。私が集めたコレクションは、インスタグラムで「クトゥルフ博物館」と検索していただければ、写真を見ることが出来る(平成28年8月現在)。

 私にとって、こういったものを集める最大の理由は、自分がクトゥルフ神話の小説に入ってしまったような錯覚を味わうことができるということである。クトゥルフ像を手に持ち、眺めながら、色々な空想をする。この像にまつわるドラマ、事件、歴史を夢想し、その世界で遊ぶのである。


 そして、その世界にイベントという形で、他の人達を巻き込もうと現在画策中である。

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