第15話眞王様気づいたらレベルアップしてた。

拝啓。

父上様母上様如何御過ごしでしょうか?俺は今、異世界であるアストレアに来てからそろそろ1ヶ月が経とうとしています。

幸い現地の住人(モンスター)に助けられ(使役して)何とか生きています。目的地に向かうに当たって出会った優しい住人(ケット・シー)の協力(脅して)もあって大きな事故も問題もなく目的地へとたどり着きそうです。

父上様母親様不肖な息子はこの右も左も分からない異世界で無事に生き残れるでしょうか?元の世界へと帰る事が出来るでしょうか?ではまた。


「主様、何を先程からブツブツ言っておるのじゃ?気でも触れたかえ?」


「うるせぇ~!心の声がちょっと漏れただけだい!」


「ちょっと?盛大に漏れておったがのぅ。寧ろ駄々漏れじゃ。」


「うぐっ!俺そんなに漏れてた?」


周囲を見渡すとタロウとハナコ、それに他のゴブリン達もちょっと引き気味に笑顔を作っていた。

無論!リリムはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべていたが。


父上様母親様正直恥ずかしさの余り頓死しそうです。


俺達はケット・シー(デブ猫)との不可侵協定基同盟を結び、リリムの領地迄のおおよその日数分の食料と商人達が使う秘密の裏道が記されている地図を使い、約1ヶ月は掛かる所を20日に短縮する事が出来た。正に商人様々って感じだ。


持つべき物は優しさだな。殆ど脅して得た物だが。まぁ嘘も方便って言うし、この位は可愛いもんだろう。お陰で雑草のフルコースは避ける事が出来たし、然程大きなトラブルにもならずに済んだし良かった良かった。終わり良ければ全て良しだな!


そんな事よりも途中から気になっていた事が1つだけ。ケット・シーの街を出てから暫く経った頃辺りから何やら俺の頭の上に小さな光がチカチカと点滅しているのに気が付いたんだ。最初は余り気にもしていなかったんだが、いや寧ろ全く気付いてすらいなかったんだが。気になったら確認しない訳にはいかないだろうということで、俺はウィンドウを開いて確認してみた。


【名前】【立花 雪】

【年齢】【20歳】

【性別】【男性】

【種族】【魔族】

【職業】【魔王Lv2】1UP↑

【召喚ポイント】(200)20UP↑

【スキル】【作話】new【恐喝】new


「何じゃこりゃあぁぁぁぁぁっ!!!」


俺のいきなりの大声で周りにいたリリムとタロウ・ハナコそれに他のゴブリン達が一斉にビクッと体を震わせていた。


ッ!?What is this?これは何ですか?えっ?何で?どういう事?色々とまた突っ込みたい事だらけなんですけど?

俺は1人プチパニックになっていた。こんな時は先ずは深呼吸だ!ひぃひぃふぅ~ひぃひぃふぅ~。あれ?何か違う気がする。


後々考えたらあの呼吸法は妊婦さんのお産時での呼吸法だと気付いたのは少し経ってからの事だった。


まぁそれは置いておいて。少し冷静に考えてみようか。疑問その1。何故俺のレベルが上がっているのか?俺はこの異世界に来てから今迄の道中一切の戦闘行為には参加していない筈なのに。疑問その2。レベルの他に召喚ポイントもアップしているんだがこれ如何に?疑問その3。新しく【スキル】なる物を習得しているんだが、これは一体全体どういう事だ?つーか何だ?この【作話】に【恐喝】ってスキルは?全くもって嬉しくないんだが?寧ろちょっとイラっとする感じがする。


俺は若干のイラつきを覚えながらウィンドウ画面を指で力を入れながらビシビシっと連打していた。


【スキル】

ある一定の条件を満たすと習得可能となる。但し、スキルにはそれぞれ熟練度があり熟練度が上がるほどそのスキルの効果も上がる。また特定のスキルによっては熟練度が存在しない物もあり持っているだけで効果を発揮する物もある。


【作話】

実際には体験していない話をあたかも体験したかの様に話す事。記憶障害の一種。


【恐喝】

言葉で相手を恐れさせる。


「何じゃこりゃあぁぁぁぁぁっ!!!」


俺の咆哮が空へと虚しくこだまする。またもや周りにいるリリム達は体をビクッと震わせている。リリムに至ってはハッ?何こいつ大丈夫?みたいな顔で見ている。他は心配そうな顔をしてくれているのに。


スキルの説明についてはまぁ良いだろう。だがしかし!だがしかしだ!この2つスキルについては俺は一切納得していないんだが!そもそも!【作話】なんて何?俺病気?みたいな感じなんですけど!それに【恐喝】ってなんだよ!俺は元来人畜無害ど通って来た男だぞ!納得いかない。俺は断固としてこの問題には異議を申し立てる!


俺はウィンドウ画面に対してブツブツと文句を言っていた。うん。既に何か痛い人になってるね。


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