ボクのホチキス奮闘記

@omochan

第1話

プロローグ


ボクには、秘密がある。それは、ボクがこの世界の人間じゃないってことだ。ボクが来たのは、この世界とそっくりの世界だ。本当に何もかも同じ。もし、この違和感さえなければ、ボクは、この世界が前の世界と同じだと疑わずに、ずっと信じて生活したにちがいない。


ボクは、10歳の時、神社に迷い込んだ。そして、そこで、可愛い女の子にあったんだ。そして、その子が、迷っていたボクを元の場所に返してくれたんだ。少なくとも同じような世界に。


これって、もしかしたら、神隠しなのかな。今では、そう思える。でも、その時は、家に帰ったって信じていたんだ。優しいお父さん、お茶目なお母さん。何もかもが、同じだった。違っていたのは、8歳の誕生日にもらったお気に入りのホチキスがなくなっていたことだった。


「お母さん、ここにあったホチキスしらない?」

「ホチキスってなに?また、お母さんをからかうための言葉遊びしてるの?」

「違うよ、ほら、8歳のお誕生日に、スミレちゃんからもらったホチキス。」

「スミレちゃんからもらったのって、傘じゃなかったっけ?ほら、いつも大切にしている黄色い傘。」


そして、これが、全ての始まりだったのだ。

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