「「異世界から来て魔王と勇者を兼業した唯一無二の人間だよ」」
Hurricane(そよ風)
序章・「「この日のことは忘れないでしょうね」」
プロローグ・「あ、おはようメイドさん。・・・・・・・・・・・あれ?」
「・・・・・・て・・・ください。あの・・・?起きてください、ご主人様っ。
うぅ・・・私が怒られちゃうんですぅ・・・」
「ん、あ・・・ああ、うん。おきるおきるって・・・」
なけなしの精神力を駆使しベッドから上半身を起こし、俺はぼんやりとした頭で声のした方を見る。
声の主はなぜか銀の丸いトレイを両手でしっかりと抱きかかえたメイド服の少女だった。
栗色のふわっとしたロングヘアをカチューシャ(メイド仕様)で留めている少女をぼーっと見ていると、
「あうあうあうもしかして無理やり起こしちゃったからお気分を害しちゃったのかな・・・っっ!?」
小声でカタカタとおびえる女の子。・・・なにこの小動物かわいい。
とは言え、これ以上無言の圧力を(かけているつもりはないが)かけ続けていると本気で泣き出しそうだったので、立ち上がり可能な限り優しげな声を出す。
「おはようメイドさん」
「あ・・・!おはようございます、ご主人様っ!」
うって変わって自然な笑顔で挨拶を返してくれるメイドさんから目線をずらし、部屋を見渡す。
精巧な飾りがふんだんに付いていて天蓋まであるベッド。
対照的にシンプルながら滑らかな曲線を描く木製の机と椅子。
素足を受け止める柔らかく暖かいカーペット。
極めつけはとんでもなく広い部屋自体。
他にも大鏡や戸棚やクローゼットらしき物もあったのだが残念なことに目はいる余裕などなくなっていた。
それ以上に明らかにおかしいところがあったからだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
大窓を開けると半円形の大きなテラスがあり、朝日が、山々が、鳥が、そして町が見えた。
「・・・?ご主人様?」
後ろで首を傾げているのだろうメイドさんを放置し、森が近い場所特有の新鮮な空気を吸いつつ
深呼吸を繰り返し、ようやく頭が完全に覚醒した。
「あのー、うん。そこのメイドさんにちょっと聞きたいんですが」
「は、はい。どうかなさいましたか?」
「何処(どこ)だよ此処(ここ)はっっっ!!?」
・・・・・30分後。
寝て起きたら見たこともない場所にいて慌てながら騒ぐという混乱のお手本のような男と、
その姿に驚きすぎて「えっ?」以外の言葉を発さないメイドさん。
そんな2人は疲れ切り、ほんの少しの冷静さを取り戻していた。
「はぁ・・・。ごめんメイドさん、そろそろちょっと現実と向き合わないといけねえわ・・・。
そうだな、まず君は誰なの?朝起こしてくれたことといい、どっかの風俗店の回し者か何か?」
・・・一応補足するが普段なら女の子相手にこんなことは言わない。ちょっと投げやりな気分で勢いのまましゃべった結果こうなっただけである。
「ふーぞく・・・?あ、えっと私はマキナ・ソレイン・アルティベート=リア様にお仕えしているメイドの1人、ルーレです」
下ネタに純反応を返されたことに対する罪悪感とともにとてつもなく嫌な予感を感じた。
このメイドさん、ルーレはマキナなんとかいうやつに仕えているらしい。
ルーレの言葉を聞いている限り、彼女が仕えているのは自分であろう。
しかも何か・・・自分が話している声がいつもより高い気が・・・。
そこまで思い立った彼が「いやいやそんな、まさか、ね・・・?」とつぶやきつつ、大鏡をのぞき込むと。
そこにはきょとんとしたルーレと。
見たこともない金髪の青年が呆然とした顔で見つめ返して来ていた。
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