彼女の純情
天邪鬼
婚約
生涯孤独を心に決めていた二人だったが、ひょんなことから引かれ合い、交際を始め、ついにここまで辿り着いた。
絶対結婚なんてしないって言ってたあの子がねぇ、とお互い同じことを親戚に言われた。
結婚式を翌日に控え、真実は胸の高鳴りを抑えられずにいた。
「明日の式の成功を願って、乾杯。」
窓から見える夜景が美しいと評判の高級レストランで、二人は互いを祝福し合った。
「真実さん。」
「なんですか、結さん。」
「いえ、その…私を選んでくれて、本当にありがとうございます。私、とっても嬉しい…」
真実は返事をする変わりに、優しく微笑んだ。
二人は、しばらくの間見つめ合っていた。サイトのレビューで星5つがつく夜景でさえ、二人の気を逸らすことはできなかった。
真実は、こんな甘い時間がいつまでも続くのだと思っていた。
しかし不意に結は俯いて、しばらく何か考えているようだったが、やがて決心をしたように真実の瞳を見つめ直し言った。
「ねぇ真実さん、私ね、どうしてもお話ししておきたいことがあるの。」
「なんですか、そんなに深刻な顔をして。まさか、今さら婚約破棄だなんてやめてくださいよ?」
ハハハ…と真実は冗談めかして笑ったが、結の表情が変わることはなかった。そして、何か事情があることに気付き、真剣な面持ちで結を見つめ返した。
「話してください結さん。あなたのためなら、それがどんなに辛いことでも必ず真摯に向き合います。」
「約束…してくれますか?」
真実はコクりと頷いた。
「それでは真実さん、私が話し終わるまでは、何も言わずに黙って聞いていてほしいのです。お願いできますか?」
真実がまたコクりと頷くのを見て、結は大きく深呼吸をしてから話し始めた。
「私は、兄を愛していました。」
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