ネズミが恩返し。

「……いっ……生きてるのか?これ……」


朝一から殺人現場に鉢合わせたなんて嫌過ぎる。


新手の死体遺棄にしても粋すぎるぞと慌てふためくエト。


「……スゥ……スゥ……」


だが、そんなエトの予想は外れ、気持ち良さそうに寝息を立てている女の子。


それを確認したエトは、とりあえず殺人現場に立ち会わせたのではなかったとホッと胸を撫で下ろした。


「……さて、とりあえず状況を整理しようか……」



あまりの事態を前に、まずは自分を落ち着かせようと、冷静に状況を整理することにした。



「よし、まず……」


『朝、目が覚めて、気持ちのいい朝だから散歩にでも行こう‼︎と玄関のドアを開けたら、全裸の女の子がうちの玄関の柵に挟まって眠っていた』


「……うむ、全っ然理解できない。」



冷静に状況を整理したところで、訳がわからない事態は訳がわからないままだった。


「とはいえ、このまま放っておくわけにはいかないよな……うちの敷地内だし……」


せっかく殺人事件を逃れたのに、このままでは性犯罪で巻き込まれかねない。


「……しかし泥棒じゃないよな?こいつ、どう見ても一銭も持ってなさそうだけど……」


服すら着てないのだから一文無しは分かるし、明らかに怪しい身なりの人間が、自宅の柵に挟まっていたら、誰だって疑うだろう。


どう見ても訳ありだし。


「……ま、今はとりあえずこれをなんとかしないとな」




警察に突き出すにしても、このままの状況では警察を呼べば、逆にこちらが捕まりかねない……。




まずは一糸まとわぬ姿で柵に挟まっている女の子の状況をなんとかしなければと思考を巡らせるエト。


幸いなことに、


朝早いため、まだ人通りはない。


今のうちになんとかすれば誰にも見られないうちに処理することができると考えたエトは、


処理する方法として、うちに連れ込むか、担いで近くの河原まで行き、捨てるかの二択から選ぼうと考える。


しかし、そのどちらを実行するにも問題が一つ。


「……どーしたらこうなるんだよ」


そう、女の子は柵に挟まっているのだ‼︎


鉄格子になっているエト宅の柵は、ちょっとやそっとでは曲げることすら難しい。


しかも、




この女の子、かなりスタイルがいいのだ。


身長は目測で140〜145くらいで、細い手足、小柄な体付きににもかかわらず、胸の位置には立派に育ったアレ、胸の割にモデル並みにくびれた腰、

キュッと引き締まった尻に、大きな骨盤。



いわゆる安産型な体型だ。



そして、そんな尻……尾骶骨の位置から生えた、さっきからチョロチョロ動いている長い尻尾。


「――って尻尾⁉︎」


一人で見つけて一人で驚くエト。


思わず大きな声を出してしまった。


よく見たら頭に獣耳もあるし、どうなっているんだこいつ⁇


「……服は着てないのに耳と尻尾つけてるとか……変態か?」


と自分の発見にさらに混乱を増すエト。


「んん〜……っ」


そんなエトの一人騒ぎで目が覚め始めたらしい女の子が、可愛らしい声を上げて伸びをし始めた。


しまった‼︎


と思ったがもう遅い。



「くあ〜っ……んん?」


ついに目が覚めたらしい女の子が、眠そうに目をこすりながら上体を起こた。


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